消極的要件
絶対的不登録要件と相対的不登録要件
本書では、3条を積極的要件として、4条を消極的要件としています。そして、4条の消極的要件を更に、
- 絶対的不登録理由:4条1項1号~7号、9号、16号
- 相対的不登録理由:4条1項8号、10号~15号、17号~19号
に分けています。
相対的不登録理由については、私益手不登録理由であり、無効審判の除斥期間がるとします(47条)。
絶対的不登録理由は、
相対的不登録理由は、
- 肖像・氏名等(8号)
- 周知商標(10号)
- 先願(11号)
- 防護標章(12号)
- 商標権消滅後の登録禁止(13号)-廃止(削除)
- 種苗法の名称登録(14号)
- 混同的商標(15号)
- ぶろう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する商標(17号)
- 立体の機能的商標(18号)
- 著名商標(19号)
とあります。
コメント
一ヵ所、本の誤植を見つけました。2号が相対的不登録理由と記載しているところがありました。
さて、47条で除斥期間があるのが、私益的不登録理由と言われていますが、19号がありません。「周知商標+不正の目的あり」なので、公益的不登録理由といっても良いということだろうと思います。
網野先生は、3条を一般的登録要件、4条を具体的登録要件(登録阻却要件)と分けていました。
絶対的不登録理由と相対的不登録理由のように、絶対的、相対的という分け方は、欧州のEUTM(CTM)以降だろうと思いますが、今や完全にこの分け方が世界の商標業界では一般的です。
そうなると、3条と4条の絶対的拒絶理由を絶対的拒絶理由として、4条の私益的拒絶理由を相対的拒絶理由と分けるのが、自然です。
次ぎに、抜本的な法改正をするなら、ここに手を入れないといけないだろうと思います。
現行の4条を見ると、10号の前後で、絶対的(公益)と相対的(私益)に線が引かれているようですが、相対的(私益)の8号が前にあったり、絶対的(公益)な16号が後ろにあったりして、統制が取れていません。
もともと、16号が最後の条文だったので、非常に重要な条項なんだろうと思いますが、そもそも、3条よりの話ですよね。
是非、読みやすくしてもらえればと思います。
日本の無効審判の除斥期間は、私益の相対的拒絶理由にのみ設定されていますが、欧州の異議申立は、公益の絶対的拒絶理由については異議をすることが出来ず、異議できるのは私益の相対的拒絶理由だけです。
異議申立は、抵触性の審査が無審査なので、審査の補完という面が強く、絶対的理由の方は、審査官が厳しく判断するという構成です。
欧州の考え方はありだろうと思いますが、権利者には、使用義務があるだけではなく、類似商標の監督義務まであることになります。
また、アメリカは使用主義ということもあり、大変の手間のかかる商標制度です。(原理的には優れたものがあります)
強い商標(ブランド)を作るには、商標管理にもある程度のコストをかける方が良いと思います。
商標管理の強い会社は、商標(ブランド)の力が強いように思います。
合理的で、運用の楽な商標制度は、良い面もありますが、原理から離れ過ぎると、強い商標(ブランド)はできないように思います。
日本も、昭和34年型のキャッチアップ型の商標制度から、先進国としての商標制度に脱皮しないといけない時期であるように思います。