Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その65)

審決取消訴訟

拒絶査定不服審判、補正却下の決定(査定系)、

登録無効の審判、登録取消の審判(当事者系)については、

東京高裁(知的財産高等裁判所)に提訴できる(63条)。

 

査定系の訴えでは、特許庁も一方の当事者であり、特許庁との連絡の便宜のためにも、また工業所有権法上の判断の統一のためにも、東京高等裁判所知財高裁)の専属管轄としている。

 

  • 原告適格は、当事者、参加人、当該審判若しくは再審に参加申請して拒否された者に限る。
  • 被告適格は、査定系では特許庁長官であり、当事者系では当該審判等の被請求人である。
  • 出訴期間は30日で、不変期間である。
  • 審決取消訴訟の審理範囲については、対象は原審決であり、原告が判断の違法を争い取消しを求めた審決において審理判断された当該審決理由に限定され、それ以外の理由を取消理由として取り上げることはできない。なお、「リンカーン」商標事件というものがあり、訴訟段階で前の主張を補充し、新たな立証をすることを許された。
  • 裁判所は破棄変更による自判はしない。司法機関と行政機関の権限配分政策による。
  • 取消判決の効果は、判決主文が導きだされるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる。再度の審判手続において、同一の使用事実につき、この使用事実が認められるとして新たな証拠を採用し、不使用取しを不成立とした前審決を取消した前判決と別異の認定判断をすることは、先の取消判決の拘束力により許されない(壁の穴事件)。

コメント

面白いなと思ったのは、条文上は、63条にせよ、特許法178条にせよ、東京高等裁判所という名称が残っているという点です。

知財高裁といっても、東京高等裁判所の中に設置されたものに過ぎないという点があるようです。

知的財産高等裁判所設置法(平成16年6月18日公布 法律第119号) | 知的財産高等裁判所

 

それはそうと、なぜ、東京かという理由ですが、特許庁が東京にあるためだそうです。

この理屈からは、もしも、特許庁が高松に移転したら、この理屈からすると、知財高裁は高松に移転した方がBetterです。

 

実際には、そうはならないのでしょうが、アメリカや韓国を見ていると特許庁がだいぶ首都から離れているので、あり得ないことはないなと思いました。

 

ただ、そうなると法律を変える必要がありますので、この点では大変ですね。

 

先日、ドイツの案件で、意見書のあと、Appealというので、審判請求だろうと思っていたら、ドイツには審判がなく、それに該当するものは特許裁判所への提訴となっているということを聞き、驚きました。

審判制度は、ドイツからではないようです。中南米(コロンビア)なども、審判ではなく訴訟だったように思います。審判というのはどこから来た制度なんでしょうか。アメリカでしょうか?