人文書や専門書は電子化されず
2021年2月23日の朝日新聞に、大手出版社では電子書籍の売り上げが伸びているが、コミックに偏重しており、コミックを有する大手は電子書籍のメリットを享受しているが、人文書や専門書では、電子化が進んでいないという記事がありました。
- 講談社が好業績
- 2007~2008年の赤字を契機に、既刊本まで電子化した
- KADOKAWAも、電子は成長分野
- 紙が134億円。電子が112億円。電子の7割はコミック
- 小学館も、コミック中心
- 現在、出版市場の4分の1が電子書籍
- 一方、紙は前年比1%減。ピーク時の半分以下。雑誌が下落
- 電子出版の87%はコミック
- 電子化にはコストがかかる。売れない本は電子化されない
- 電子化は、売れるコミックばかり。出版文化の多様性にはつながらなかった
- 小規模の出版社が参入できる電子書籍のフォーマットの整備などが課題
とあります。
コメント
朝日新聞は先日の講談社の売り上げの記事に続き、電子書籍を追いかけているようです。
この記事の言いたいところは、電子書籍は好調であるが、コミック偏重ということのようです。
コミックは売れる→電子化が進む→電子化書籍はコミック優先となる、
という感じです。
別の見方をすると、
人文書・専門書は売れない→電子化されない→電子化で本屋は少なくなる→人文書・専門書の置いてあるところが少なくなる→人文書・専門書は売れない
という負のスパイラルに陥っているように思います。
アマゾンなどのECが普及すると、ロングテール商品が売れるようになると聞いていたのですが、人文書・専門書が売れないというのは、なぜでしょうか?
アマゾンで、専門書の代表として、「商標」で検索すると、網野先生の「商標」などの色んな書籍の画像が出てきますが、茶園先生の「商標法」や「商標・意匠・不正競争 判例百選」が、Kindle版となっています。
しかし、Kindleのリーダーを持っていないので、買うのをためらいます。
アプリを使って、PCでKindle版を読むことは可能ですが、やはりKindleが欲しいところです。
KOBO(Rakuten kobo)で、「商標」と入れると、8冊だけです。茶園先生の本はなく、百選はあります。また、中島先生のアメリカ商標法ガイドブックがありました。
どうも、方式が各社まちまちで、百選のように多くの方式に対応しようとすると、コストがかかりそうです。
また、国会図書館の納本制度では、電子出版物を積極的に集めていないようです。
有償書籍とDRM書籍を納本対象から、除外しています。
よくあるご質問:オンライン資料の納入|国立国会図書館―National Diet Library (ndl.go.jp)
卵と鶏の話ですが、国策として、電子納品を義務付けるのはありだろうと思います。そうしないと、中小出版社の電子書籍化が進まないように思います。
国会図書館のルール作りは、何らかの障害があってストップしたのでしょうが、ここをクリアーすると、人文書・専門書の電子化が一挙に進むように思います。
方式の乱立の問題はあり、電子納本には何らかの工夫は必要ですが、電子化自体はされることになるので、最終的には、ロングテールのメリットが出てくるように思います。