バパット・ヴィ二ットさんの講演会
2017年7月6日に商工会館で行われた、バパット・ヴィ二ットさんの講演会に参加しました。
インド英語を理解できるのか?逐語通訳があるのか?など考えながら参加したのですが、完璧な日本語を話すインド人の講師でした。
東大の理系で博士号を取得されたインド国登録弁理士ということです。日本で、サンガムIPという会社を経営されています。
大きな視点から、細かい点まで、良くできた講義内容でした。
商標の専門ではないのでということで、ネット(Skypeでしょうか)で2名のインド人の女性弁護士が紹介され、何かあれば、彼女たちが答えますと言っていましたが、質問時間が短かったためか、再登場はしませんでした。趣向は面白いですね。
途中で、サンガムIPの事務担当の方が出てきて、インドのWebsiteの説明などをしていました。これも良くできた会社PRです。
インド人講師おそるべしです。これぐらいPRしたら、一度、頼んでみようかとなりますね。
<大きな視点>
インドでは、2014年にモディ首相になってから、改革が進んでいるようです。
特に、「物品サービス税」というものが凄いようです。従来は15種類を超える間接税があったのを、一本化できたようです。10年来の悲願で、モディさんの清廉潔白な人柄があって初めて達成できたという説明でした。インドでは2%の人しか、税金を支払っていないと言われており、税金によって国力がアップしたインドは今までのインドとは違うという説明がありました。
また、シラタマン商工大臣という女性大臣は、鉄の女といわれる剛腕大臣のようです。この大臣とグプタ特許庁長官がどんどん改革を進めているようです。
20年ほど前に聞いた話では、5拠点が、バラバラに、ノートに出願受付をしてた(と聞いています)が、今や電子出願の先進国となっているのは驚きです(真偽不明)。
審査官も、一挙に460人採用するなど、(中国もそうですが)やることの規模が違うと思いました。これにより、13ヶ月かかっていた、商標のFirst Actionを1ヶ月にする予定のようです(現状は、2ヶ月)。
<細かな点>
面白かった点を、列挙します。
1.商標庁の所在地は、5都市(ムンバイ、コルカタ、デリー、チェンナイ、アーメダバード。日本人は代理人の住所で決まる。)
2.商標出願件数は、27万件程度(1年で5万件増加)
3.登録主義と先使用主義を採用
コモンローのPassing Offがベースにあり、それにプラスして後から登録制度を作った形です。出願が競合するときは、先願が登録されるのではなく、先使用が登録されます。
また、日本と比べて、先使用権が強く、類似商標も使用できます。
使用主義ではなく先使用主義とされていました。
4.異議申立の滞貨は、11万件強
5.知的財産審判委員会というもの法制化されたが、まだ動いていない
6.申請制の周知商標認定制度ができた(詳細はこれから)
7.マドプロに不利はない
8.先端的な電子出願とwebsite
9.ヒンディ語と英語が商標法の基本言語。それ以外は、インドの他の言語も日本語も、ヒンディ語または英語のTransliteration(読み方)とTranslation(意味)の提出が必要。多言語間で、意味が同じ商標は登録されないようです。これについては、多くの判例があるようです
10.電子出願とwebsiteは、最先端のものになっています。
11.審査レポートは、すでにemailで送られてくるようになているようです。
12.ヒアリングは、電話会議、TV会議を想定している(未運用)
13.登録証は電子版のみ
14.裁判では和解になることが多い。裁判所は、知財は高裁からスタートすることが多く、高裁は4つ。デリー、ボンベイ(ムンバイ)、マドラス(チェンナイ)、コルカタ(カルカッタ)。なぜか、裁判所だけは、古い地名の言い方を踏襲している。ここは、面白いと思いました。
まだ、裁判官はウィッグをつけてやっているのでしょうか?
15.税関登録もオンライン
<まとめ>
インドは 中国ほどではないですが、関心が高い国で、聴衆の数も多かったように思います。講師はインド専門の特許事務所のようなことをされていますが、インドだけで事業として成り立っているというのは、凄いですね。
インドには2010年に出張で行き、以前の会社の他、インド電通などに行きました。それから、7年、だいぶ変わっているのでしょうね。