Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商品形態模倣(韓国)

一般条項、価格差の問題など

 

昨日の続きで、パテント誌の2018年12月号の韓国の弁護士、弁理士さんの論文を読みました。日本法と法律が似ているためでしょうか、読みやすいなと思いました。詳しくはパテント誌でご確認ください。

 

商品に限定した説明ですが、

大きく、

前者が日本の不正競争防止法の2条1項1号(周知表示混同惹起行為)に、後者が日本の不正競争防止法の2条1項3号(商品形態模倣行為)に近いようです。

 

一方、日本の2条1項2号(著名表示冒用行為)に相当するものの説明がありません。これがない替わりに、韓国では一般条項ができたのかもしれまえん。一般条項は、2014年1月31日と最近の施行です。(不正競争防止法第2条第1号ヌ目)

 

ヌ.その他他人の相当な投資又は労力により作成された成果等を公正な商取引慣行又は競争秩序に反する方法により自身の営業のために無断で使用することにより、他人の経済的利益を侵害する行為

 

とあります。限定列挙主義では社会の変化で現れる多様な類型の不正競争行為を適切に規制することができないためと説明があります。従来、民法で(判例で)保護していた一般的不法行為を、不正競争防止法にもってきたようです。

実際の事例としては、エルメスバーキンやケリーの保護ですので、実際は著名表示冒用行為が救済されるのだと理解しました。

 

ちなみに、韓国の法律で、イロハが出てくるのは、どうしてだろうと思っていました。韓国労働法の解説ですが、

号にさらに列記がある場合に使用されているのが「モク」であり、ハングルの子音配列であるカ、ナ、ダ、ラ・・・の順に列記される。日本でのイロハ・・・に当たるといえる。

とありました。

韓国労働法:試訳集について|労働政策研究・研修機構(JILPT)

おそらく、韓国のカナダラを、日本ではイロハとしていると理解しました。

 

もう一つ、面白いのは、1号の商品主体混同行為の説明にあった、「真正商品と模倣品の価格差が大きい場合の混同可能性」です。

模倣品が真正品に比べてはるかに低価格な場合でも、誤認混同の可能性があるとあります。

企業のマーケティング戦略で高価格戦略と共に低価格戦略を取ることもあることや、並行輸入では真正品が低価格で販売されることがあるためとあります。(ソウル高等法院2008年12月9日付2008ナ35359判決)

 

これは、日本のフランク三浦事件とは反対の結論になる理屈です。

フランク三浦の判決は、著名商標の保護の視点では、承服しがたい結論となっている事件です(この判決は問題があるので、再考が必要と思っています)が、フランクミュラー側の弁護士が、韓国のような理論を打ち立てておけば、何とかなったのかもしれません。

 

日本の裁判が必ずしも進んでいる訳ではありませんし、外国と違う考え方は、日本の裁判所の孤立にもつながり、グローバルな知財問題では良いことはないので、この種の裁判では、外国判決の理論を日本の裁判官に紹介することも有用なことかもしれません。