最近の高級品リユース市場
メルカリとコメ兵
2019年10月17日の日経に、高級品リユース市場の業界再編に関連して、フリマアプリが業界の秩序を変える「メルカリ・エフェクト」で、リユース各社がメルカリの影響力の弱い高級品市場に活路を見出しているという話がありました。
高級品リユース 戦国時代 メルカリの手薄な分野 再編加速 :日本経済新聞
- コメ兵がブランドオフを、ゲオが おお蔵を、ブックオフはジュエリーアセットマネジャーズを買収
- フリマアプリは、2016年から、2018年(6400億円)で、倍の市場に
- 店舗からフリマアプリへの流れ
- しかし、フリマアプリの得意はゲーム、雑貨、子供用品
- 10万円を超える高級品は偽物への懸念がありフリマアプリより実店舗
- メルカリもブランド品専門サービスは撤退。コメ兵などは、実店舗に専門家、信頼高い
- メルカリ効果で、中古品への抵抗感は薄れており、業界は拡大方向
コメント
フリマアプリで中古市場が変化しており、色んな影響が出ているようです。
低価格品はフリマアプリが強く、高級品は弱いとあります。
やはり、消費者はネットでの高級ブランド品の中古の売買には、消極的なようです。リアルな実店舗で、鑑定の目利きがある方が、安心感があります。
フリマアプリは高級品まで万能なのかと思っていましたが、偽物があると分かっていると慎重にはなります。
この記事のポイントは、ここでしょうか。
低価格帯はメルカリなどのフリマアプリの市場になり、コメ兵などのリアルな実店舗は高級価格帯にシフトしており、総合リユース企業や、中古ブランド品大手が、ブランド品を扱う準大手や中堅を買収しているとあります。
その一方で、フリマアプリの普及で、商品者の中古品売買に対する心理的なハードルが下がり、市場全体は活性化しているというというのも、面白い動きです。
日経では、同じ紙面で、国内の高級品市場は約2500億円と拡大しているが、メリカリ効果で高級品への参入企業が増え、流通量が増えたことと、香港デモの影響で、購入品の値崩れが起こっているという話もあります。
香港デモは、一時的な話かもしれませんが、流通量が増えて、値崩れするというのは中長期的な影響として良く分かる話です。
複雑に絡み合っているなと思います。
広告と個人の発言
香港リスク
2019年10月14日の朝日新聞に、最近の香港の取扱いが中国市場においてはリスクになっているという記事がありました。
事例としては、
- ヴェルサーチェ、ジバンシィ、コーチがTシャツなどのデザインを巡り中国で謝罪
- NBAヒューストン・ロケッツのGMのツイートについて、中国側が抗議
- ティファニーの指輪の広告が公式ツイッター上から削除
- 中国側の要請で、日本航空と全日空のホームページの目的地の国別選択も変更
- 2025年には世界のぜいたく品の4割を中国人が消費するという予想
- 各社はこれまでも、配慮していたが、新たに香港も
- 2022年には北京冬季五輪。中国は「開放と寛大さを維持する」
などとあります。
コメント
中国などで、広告や広報を担当する人は、大変だなと思いました。何が現地の人に避難されるか、外国人からは分からないときがあります。
グローバル広告なども、事前に中国現地法人の担当者のチェックを受ける必要があるなという気がしました。
場合によっては、それを専門にするコンサルティング会社が必要かもしれません。
NBAとの件は、アメリカ人の感覚では、何をツイートで発言しようが自由でしょうが、それが問題になり、チームやNBAに迷惑をかけることを考えると、個人としても自粛せざるを得なくなります。
一方のティファニーの件は、事前に準備していたものであり、そのような意図はなかったと別の記事で読んだのですが、そうであっても止めないといけないということなんだと思いました。
しかし、準備もしており、広告の作り直しには、時間も費用もかかります。この判断も難しそうです。
ヴェルサーチェ、ジバンシィ、コーチのTシャツの問題は、はじめて聞きました。FASHIONSNAP.COMによると、
ヴェルサーチェで問題となったのは、世界の都市名と各都市が属する国をバックにデザインしたTシャツ。北京と上海は中国として表記されていた一方で、香港とマカオは中国ではなくそれぞれ別の国として「HONG KONG」「MACAO」と分けてプリントされていたことで、中国国内で反発が起こった。
とあります。
「ヴェルサーチェ」「コーチ」「ジバンシィ」「アシックス」が中国で立て続けに炎上、SNSで謝罪
アシックスは、サイトの国選択に、台湾と香港があったことが問題になったようです。
リスクマネジメントとして、企業の実務担当者が、気を付けておかないといけないことが増えてきているなと思います。
ダイソンのEVカーの撤退
決断が早いが...
2019年10月11日の日経に、ダイソンがEV開発を中止したという記事がありました。
英ダイソン、EV開発を中止 採算のメド立たず (写真=AP) :日本経済新聞
- ダイソンは、電気自動車(EV)の開発中止を発表
- 採算が取れる見通しが立たないと判断し、取締役会で事業の終了を決めた
- 2017年9月にEV参入を表明
- モーターやバッテリーから車体まで自前で開発する方針で、2018年10月にはシンガポールで生産すると発表
- 事業の売却先は見つかっていない
- EVに携わっていた技術者は家電部門などに
コメント
少し前に、ダイソンがEVに参入するということがニュースになっていたぐらいに思っていたのですが、あっという間の撤退です。日経の記事には、2017年9月にEV参入を表明とありますので2年です。
フォルクス・ワーゲンなどが、本気でEVを作り始めると、対抗できないのは分かります。鮮やかな撤退という気もしますし、早すぎる決断という気もします。日本企業なら、参入を決めたときの責任が、問題になりそうな話です。
車は電池の充電さえ早くなれば、EVで十分だと思います。ダイソンは、全固体電池の開発は継続するようです。この電池は急速充電可能です。
ダイソンは、車メーカーではなく、電池などの技術研究開発型の企業としてやっていくのでしょうか?
日経ビジネス電子版の2018年1月12日の記事に、創業者のジェームズ・ダイソン氏の話として、なぜ、EVに進出するのかという話がでていました。
同氏は、ダイソンの前に、もともと、自動車の排ガスから、粒子をサイクロンで分離する研究をしていたようです。
しかし、クリーンディーゼルは環境によいという話が出てきて、この排ガス装置の開発から撤退したようです。
その後、フォルクス・ワーゲンのディーゼルスキャンダルがあり、EVしかないと考えたとあります。
ジェームズ・ダイソンがEV参入の狙いを激白:日経ビジネス電子版
参入を決めた時も、社員にメールで、連絡をしています。読むと、日経ビジネスのまとめ通りで、なぜ、ダイソンがEVに取り組むのかは理解できます。本人が書いたような文章です。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/011100194/011100001/?SS=imgview&FD=1154188341
そして、今回です。今回もEV開発断念を、社員にメールで連絡しています。ただ、今回は、広告のような文章になっており、広報の文章作成のプロが書いたような文章になっています。おそらく、社外が入っていると思いました。
内容的には、社員に対するメールですが、おそらく、社員だけではなく、社会に対して状況を説明しようとしているのだと思います。
See the story behind the Dyson electric vehicle | Dyson Automotive
ダイソンというと、英国からシンガポールに本拠を移したことを思い出しますが、これは、2019年1月23日の日経に記事がありますので、今から約半年前のことです。
結局、残ったのは、ダイソンのシンガポール移転です。
EVを発売するという話は、夢があります。それがあるから、人が集まるのだと思います。シンガポール移転だけでは、現実的すぎて、夢がありません。
キュウサイの「青汁」
「Q'sai THE KALE」に
2019年10月18日の朝日新聞に、キューサイの青汁が、「青汁」という名前を止めるという記事がありました。
- 健康食品のキュウサイ(福岡市)は、青汁の商品名を、「ケール青汁」から「THE KALE」に変更。青汁だけの会社のイメージを一新
- 「まずい、もう1杯!」のCMで認知。現在は多角化
- 青汁が同社の売上高に占める割合は、現在1割
- しかし、キューサイといえば「青汁」のイメージ
- 他の商品の認知度不足が悩み
- 青汁の文字をなくし、原料のケールを全面に押し出し、健康食品の会社であることを強調
- 会社のロゴも、緑字の「キューサイ」からアルファベットに変更
とあります。
コメント
たしかに、「キューサイ」には「青汁」のイメージがあります。青汁も健康食品の一種ですので、健康食品なら問題ないとしても、化粧品に「キューサイ」は少し遠いかもしれません。
しかし、折角、「キューサイ」と「青汁」はセットで有名なのに、何かもったいない感じがするなと、はじめこの記事を見た時は思いました。
もし、他の商品とは合わないなら、有名な「キュウサイの青汁」は残しておいて、化粧品には、別のブランドをつけて、企業全体のコーポレートブランドは、例えば、今回ロゴを変えた「Q’sai」にするなどにすることで、十分なように思いました。
この点、今回の同社からの発表は、次にあります。朝日新聞の記事とは少し視点が違います。
【「青汁だけの会社」というイメージから脱却! 創業55年目を迎え、ロゴとコーポレートスローガンを刷新】|ニュース|キューサイ 企業サイト
今回の発信は、新聞では「青汁」の名前をやめることだけにフォーカスしていますが、実は、
- コーポレートブランドロゴの刷新
- コーポレートスローガンの刷新
- 新スキンケアブランド『Skinkalede(スキンケールド)』の新発売
- 主力商品のパッケージリニューアル
- 企業サイトとショッピングサイトのデザインも刷新
というものを一挙にやったようです。具体的には、次のような各説明があります。
- 新ロゴ
- 「Q」には、「Question:常に問いかけること」、「Quest:探求していくこと」、「Quality:高い品質であること」の3つの想い
- コーポレートカラーには、青汁を想起する緑色と地球を想起する青色の中間色を採用。「Q’SAIブルー」と名付けた
- 新コーポレート・スローガン「生きるを、しなやかに。」
- 関係会社の社名の表記方法の改定
- 公式ショッピングサイトの改定
キューサイ【公式】通販サイト | 青汁、コラリッチ、健康食品の通販
ここまでやるなら、戦略的な発想に基づく、大々的な変更だなという感じです。(※ 正式社名は、「キューサイ株式会社」のままのようです)
そもそも、青汁の売上高はすでに、1割ということであれば、もしも仮に、青汁がTHE KALEになったことが理由で売上が下がったといしても大した影響はなさそうです。
それよりも、化粧品などの他の商品の売上増が期待されるので、全体的にはプラスに働く感じです。
昨日の、ヴィッツとヤリスはグローバル化の話ですが、こちらは、強い祖業があるときの、事業の多角化の話として、非常によいケーススタディの材料になりそうだなと思いました。
ヴィッツがヤリスに
1999年発売、スターレットの後継車
2019年10月17日の日経に、トヨタ自動車のヴィッツが、世界で使っているネーミングのヤリスに統一するという
トヨタ、ヴィッツ改め「ヤリス」に 新型で部品・設計を共通化 :日本経済新聞
- 新型車は、2020年2月に発売
- 日本と世界で分けてきた車名「ヴィッツ」と「ヤリス」を統合
- デザインやエンジンを一新。ハイブリッドとガソリン車がある
- 安全機能、追従走行支援機能などを装備
- HVは家庭用コンセントで使える外部給電機能をオプション
- ヴィッツは、1999年登場で、スターレットの後継車
- 2018年の世界販売台数は約33万台。6割強を欧州で販売
とあります。
コメント
ハイブリッドが出てくるようです。これでAQUAとの競争になりそうです。ハイブリッド車は人気で電池の供給が間に合わず、ガソリン車に比べて納車が遅いようです。おそらく、この車もハイブリッドは人気になるように思います。
ハイブリッド車の電源を家庭用コンセントで使えるというのも、いざというときのために、魅力的な仕様です。
さて、この車種は、1999年から、日本と欧州で販売しているようです。
1999年というと、既にグローバルネーミングの必要性が叫ばれていた時期ですが、トヨタは当該市場での受容性を重視して、ネーミングを地域で分けていたことになります。
理由は、二つ考えられます。
一つは、商標登録上の問題です。
もう一つは、意味やイメージの問題です。
商標登録については、今回は、ヤリス(YARIS)に統合されるわけですので、現時点としては問題ないのだと思います。
おそらく、ネーミングイメージの問題の方が、メインだったのだと思います。日本での印象では、ヴィッツは、悪い印象はありませんが、おそらく、海外では悪い印象があったのだと思います。
ネットで見ていると、イギリス英語使用圏では「Vitz」の読みが「Bit(s)」(欠片・小片の意)に聞こえてしまうためという理由や、「ビッチ(尻軽女)」の意味があるなど、いろんな意見が出ています。
また、「ヤリス」は、 日本では言葉の持つ響きがあまり好ましくないとか、「ヤリスギ」に通じるとか、こちらもいろんな意見が出ています。
ネーミング上の問題は、非常に重要です。造語で構わないと思いますが、主要市場のどこでも悪い意味で捉えられないことが重要です。
ここで、注意すべきは、ネーミングの問題はプロの問題であり、あまり現地販売会社の営業等の意見に振り回されないことです。
現地で、独自に、自分達がやりたいことをしたいので、日本初のネーミングに難癖をつけてくることは良くあります。
ここは、客観的に、インターブランド等のブランドコンサルの意見を聞く事をお勧めします。
商標調査のついでに、悪い意味がないか、弁護士・弁理士もコメントがありますが、余程の隠語に該当するようなケースでもないと、弁護士・弁理士はNGとは言いませんし、主に、識別力の有無についての意見と割り切ることが必要です。また、弁護士・弁理士の意見では、現地の営業は満足しません。
この点、インターブランドなどの、バーバルのプロの意見なら、現地の営業もそれ以上は何も言いません。
インターブランドのバーバル担当者を使った、ネーミングのイメージチェックを、どこかの関門で行うことは、非常に良いと思います。
そして、おそらく、ほとんどの企業には、商標の管轄部門はありますが、ネーミングの管轄部門がありません。法的な見地から、判断をする権限は商標担当者にありますが、イメージは放置されています。
ブランドマネジメント担当者でも、商標担当者でも、どちらでも良いのですが、このあたりが協力して、ネーミングイメージ調査をするようにするようになると良いのになと思います。
トヨタは、営業も体力もあるから良いですが、通常の会社ではヴィッツとヤリスが分かれていた20年間は、大きな損失のように思います。
その意味で、この事例は重要なケースではないかと思います。
商標の類似について
商標審査基準の読み方(4条1項11号 類似)
ある商標の集まりで、面白い議論を聞きました。商標審査基準の読み方というか、商標の審査の在り方についての話です。
A先生は、商標(標章)の類否は、商品との関係を一旦無視して、客観的に定まり、そのあと、商品の類否を決め、最終的に商標・商品の類似範囲が決まるという立場です。
一方、B先生は、商標の類否自体に、商品との関係があるという立場であり、商標(標章)の類否は商品によって変わってくるという立場です。
審査実務と裁判の乖離がある大きな点でもあります。
議論の建て方は、乱暴ですが、商標法と審査基準の記述を参考に考えてみました。
●まず、日本の商標法は、商標(Trademark)と標章(Mark)を明確に区別できていないようなところはあります。
本当は商標法の条文でも、商標(商品との関係で、標章を捉える場合)と、標章(商品とは離れて、抽象的に標章を捉える場合)を明確に区別しておくべきなのに、それが中途半端にしかできていないようにも読めます。
商標法2条には、「標章」と「商標」の定義があります。標章はマークであり、それを商品・役務に使用して、はじめて商標になるとあります。
すなわち、商標概念に、既に商品概念が入っています。
第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
一方、4条1項11号で使っている「商標」は、通常の実務の感覚からすると、「商標」とは言いながら、「標章」「マーク」のことを言っているように読めます。
第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
実際、4条1項11号に関与する実務家は、弁理士、企業の商標担当者も含めて、登録「商標」やこれに類似する「商標」という言葉は、「標章」「マーク」と考えている人がほとんどです。
●商標審査基準は、この項目の全体の構成から、まず、商標の類否を見てから、商品の類否を見ているように読めます。
そして、4条1項11号の審査基準には、商標の類否判断は、
商標の類否は、出願商標及び引用商標がその外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する。
とあります。一般的には、この記述は、商標の類似は、外観、称呼、観念の「総合観察」するという点に目が行きますが、
一つの気付きは、出願「商標」を、「指定商品(役務)」に使用した場合にとあり、商標を、類似する商品に使用する場合とはなっていません。
これは、標章は出願商標と引用商標の二つあるのに、商品は一つであることを意味します。
さて、ここの読み方ですが、
1)ある特定の商品に限定して、はじめて商標の類似が確定できるとも読めますし、
2)商標や標章の類似は、商品の類似に先だって、先決しておくべき概念で、商標の類否は、商品の類否とは関係なく成立することを示すものとも読めます。
審査基準の立場は、必ずしも明確ではありません。
2)の考え方は、実務の考え方に近いものです。どんな商品かは関係なく、標章には標章の類似範囲があり、それが確定したのちに、商品の類似を掛け合わせて、最終的な後願排除権の範囲を決めようというものです。
2)の考え方は、機械的な判断に適しています。標章の類似範囲を機械的に決め、次に商品の類似範囲を機械的に決め、機械的に商標権の後願排除権(仮称)の範囲を決めるというものです。
さらに、商標審査基準の、商品・役務の類否は、
商品又は役務の類否は、商品又は役務が通常同一営業主により製造・販売又は提供されている等の事情により、出願商標及び引用使用標に係る指定商品又は指定役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造・販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるかにより判断する。
とあります。
商品の類似を決めるときは、対比される2つの商品があり、商標は同一だけではなく、類似まであります。
商標の類似は、同一商品でみて、
商品の類似は、同一商標のみならず、類似商標までみる。
という記述になっています。なんとなく、アンバランスです。商標でやったことを、ひっくり返すと、商品の類否判断では、同一商標を付した場合の比較にしても良さそうです。
(※ 類似商標の方が、同一商標よりも、商品を誤認する可能性は少ないはずなので、書いておいても問題はないという趣旨でしょうか?それなら、商標の類似でも、同一商品だけでなく類似商品まで入れても問題ないと思います。
商標の類似は商品の類似が決まらないと決まらず、商品の類似は商標の類似が決まらないと決まらないという循環論をさけるため、
或いは、商標の類似は、具体的出所混同という主張を避けるための整理のような気がします。)
●本論にもどって、商標(標章)の類否の考え方ですが、少なくとも、商標とは、ある特定の商品との関係における標章であり、商品との前提で商標を観察して、商標の類否の幅が決まると考えるべきではないでしょうか。上述の1)の立場です。
実務者には大変ですが、法が求めているのは、そのレベルではないかと思います。そして、そうなると、商品毎に、商標の類否は可変となります。
商標(標章)の類似自体が、商品との関係で決まる相対概念でしかなく、標章だけを取り出して、類否判断するのは、実務の便法ではないかと思います。
氷山印事件や保土ヶ谷化学事件などの判例で、具体的な取引の事情か、一般的な取引の実情か程度の議論はあっても、日本の商標法の解釈では、商品が違えば、商標(標章)自体の類似範囲も変化するという気がします。
良く、商標登録の数の少ない商品分野(たとえば「タバコ」)の商標の類似範囲は広く、商標登録の数の多い「電気機器」の商標の類似範囲は狭いなどと言いますが、このあたりの実務感覚にも合致してくるのではないでしょうか。
審査基準は、すべてをわかった上で、大人の解釈運用をしているようにも思います。
メニューの商標
メニューも商標か?
2019年10月8日のFoodistに、繁盛店のメニューについての記事がありました。
繁盛店の「メニュー名」を考察。注文数アップ、声掛けにもつながる名付け方は? | Foodist Media by 飲食店.COM
ネーミングは重要ですし、飲食店のメニューは売上を左右することもあるようです。
記事の事例を見てみると、
●メニューにキャッチコピー(餃子バル)
・絶品!手づくり餃子
・崎〇軒超え!ゴロゴロ肉焼売
・絶旨!とろーり!チーズエビチリ 石鍋で!
・すっげーー人気!パクチーメンマ
●産地など食材へのこだわりをアピール(イタリア料理店)
・山形県産金華豚のグリル
・熊本県菊池 原田さんのすごく美味しいモッツァレラと桃
・イタリア産カルドンチェッリ茸のオムレツ
●ドリンクメニューのサイズ表記で大ジョッキへ誘導(餃子酒場)
・「大ジョッキ」「中ジョッキ」ではなく、「おとな」「こども」
●ドリンクメニューにユニークな名前(居酒屋)
というようなものが紹介されていました。
どのネーミングも、売上増に貢献しているようです。詳しい説明は、Foodistでご確認ください。
コメント
「崎〇軒越え」というのは、ギリギリだなという気はしました。「〇」をつけて少し配慮しているというところでしょうか。
それはさておき、飲食店自体の名称は、「飲食物の提供」で43類の役務ですが、飲食店が提供するメニューって商標登録の対象だったかなとふと疑問に思いました。
しきし、これって、昔からある議論ですね。「美々卯」の「うどんすき」は登録商標ですというのを思い出しました。
昔は、サービスマークがなかったので、お持ち帰り商品「うどん」についての商標「うどんすき」が商標登録されているという話です。
登録2704205号に、
第30類「うどんめん、即席うどん」で商標「うどんすき」が登録されています。
ただ、サービスは、第4401785号で、
第42類では「(図形付き)うどんすき」(縦書き)が、「うどんすきを主とする飲食物の提供」となっています。
飲食店のメニューの「うどんすき」は、普通名称化していると読めます。
どうも、メニューの世界は、普通名称化との戦いがあるようです。
一般論としては、マクドナルドの「ビックマック」「マックシェイク」は、お店で飲食することも、持ち帰りもありますが、十分に商標として機能しています。メニューが商標登録にならないということはなさそうです。
普通名称化しているとか、記述的商標であって誰でも使える状態であるかどうかなどが、基準でしょうか。
おそらく、大手飲食チェーンなどは、できるだけ普通名称や記述的名称を使って、商標調査や商標登録を取る手間を省いているのだろうと思います。
(先日の商標協会の年次総会で、アンリシャルパンティエの弁護士さんは、お菓子業界はそうだと言っていました。)
上の例でいくと、
は、説明を聞かないと分からないネーミングですので、識別力の観点では、商品でも役務でも商標登録はできそうです。
居酒屋などの飲食店の中で提供するメニューなので、お店の名前で顧客を吸引していおり、そのお店のメニューは2次的な選択要素となりますので、直接的に出所混同が生じ易いかというとそうではありません。
そのため、お店自体の名称とちがい、事件にはなりにくいものではあります。
商標登録の心配をしなくて良い、しかし、特徴のある名称にして、売り上げ増を狙うとなると、キャッチフレーズ的なネーミングにすべきかもしれまえん。
タイトル、商品名の長文化の傾向です。
なお、商標の議論で参考になりそうなものは、下記です。
商標判例読解40 「皇朝」事件判決(メニューでの商標の使用は飲食物の提供についての商標の使用か) | ユアサハラ法律特許事務所
メニュー名称は「飲食物の提供」についての商標使用? | 本日の前菜(商標仕立て) | 名古屋の商標亭
マーケティングのサイトではメニューの商標登録を勧めているもののあり、このあたりは名称と企業の考え次第ということでしょうか。