Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

今年の振り返り

コロナ禍を中心として

 

昨年の年末年始は、神戸に行ったり、大阪の心斎橋にいったりしていました。

特に、大阪の心斎橋では、老舗の呉服屋さんなどが、どんどん高級ファッションブランドの店に変っていました。また、商店街はドラッグストアだらけであり、百貨店もお得意先は中国人のようであり、インバウンド消費の凄まじさを垣間見ました。

 

今年の年末年始は、ステイホームで、本当はどこも行っていけないことは分かっています。しかし、以前から申し込んでいたので、昨日、有明の東京ガーデンシアターであった吉本の「DAIBAKUSHOW2020」の第1部に、行ってきました。

観客は、半分が若い女性でしょうか。あとは色々な年代の人が来ていました。

30組ぐらいの芸人さん達が、出演者だったのです。

会場に、一番笑いが起こっていたのは「海原やすよともこ」でしょうか。

個人的に面白かったのは、「オズワルド」「すゑひろがりず」「ウーマンラッシュアワー」「ゆにばーす」です。

コウテイ」という漫才師をはじめて見たのですが、相当気合が入っていました。

 

5000人の集まったイベントでした。芸人さんも、こんなイベント、今開いて良いんのかか?と言っていました。換気のためでしょうか。室内なのに、相当寒く、コートを着て聞きました。

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さて、今年もあと一日になったので、今年あったことを振り返ってみたいと思います。

 

1.INTA

今年はINTAに行けると思っていたのですが、結局、4月末のシンガポール開催は延期になり、秋にオンラインで開催されることになり、参加できませんでした。

以前の会社の後輩がシンガポールにいるはずなので、会いたかったのすが、叶いませんでした。

 

2.TOEIC

今年の成果です。なんとか900点の大台を超えました。2019年は毎月ほどTOEICを受けていたのですが、今年は受験できたのは、年初に一度受けただけです。

その後、毎日、英語学校(Bizcom)の日課は継続しているのですが、試験を受けていないので、成果確認ができていません。これまで、3年間、毎年30点ずつ改善しているのですが、だんだん厳しい領域に入って来ているので、今年は少しでもアップできたのか、不明です。

英語の先生になる訳ではないので、満点は不要ですが、先生が950点を超えると視界が変わると言っているので、そこまではやってみようと思います。

 

3.緊急事態宣言

皆さんと同様、4月~5月ごろは、コロナの緊急事態宣言に振り回されました。 

 

4.オリンピックが延期に

オリンピックのソフトボールと、パラリンピックのボッチャのチケットが当たっていたので、楽しみにしていたのですが、延期になりました。

欧州のコロナウイルスの変異と、最近の日本の感染者数の増加を見ていると、2021年にオリンピックが開催できるとは思えないのですが、果たしてどうなるのでしょうか。

 

5.コロナ禍とペーパーレス

コロナと外国商標業務ということでは、今年、急激にペーパーレスが進んだということが挙げられます。まだ、目下進行中です。

まったく予想外でしたが、いつかはやらないといけないテーマですので、それが今来たかという感じです。

 

6.研修会

WIPOの日本事務所の方が、緊急事態宣言明けに、事務所にマドプロの出張研修をしていただきました。

非常に参考になりました。

 

7.委員

昨年から、JETROの外国出願支援事業の委員をしています。弁理士会の商標委員会からの派遣ですので、2年の制限があるそうです。おそらく今年で最後なのでしょう。運用の改善案などを出しました。少し社会貢献ができたかなと思います。

また、弁理士試験委員の端に名前を入れていただきました。

 

8.委員会活動

弁理士会の商標委員会も、Web会議で行うようになりました。ちょっと回数が不足ぎみです。国際分類導入時の議論にあった類似群コードを廃止すべきという正論を言ったつもりですが、弁理士会の商標委員会ではこの議論は難しいようです。

商標協会は、外国商標制度部会には継続参加しました。今年のトピックスは、ミャンマーでしょうか。

 

9.懇親会 

事務所の暑気払いや忘年会を入れて、毎月一回ぐらいは何かあったと思うのですが、今年は元パナの知財メンバーで1回あっただけです。 

 

10.パネルディスカッションに参加

12月に商標協会の実務検討部会のパネルディスカッションにパネラーとして参加しました。企業と特許事務所の合同の30名ほどの会です。この回は、特許事務所のパネラー3名が企業の質問に答えるというものでした。

 

企業の知財、ブランドマネジメント、特許事務所を経験して思うのは、企業と代理人の「信頼」と「コミュニケーション」の重要性です。

弁理士の代理行為は、業務委託や請負ではなく、委任であり、高いレベルの信頼やコミュニケーションが必要である、ということを言いたかったのですが、上手く表現できませんでした。

 

企業の方は、本来はすべて自分でやらないといけないのですが、時間や困難性をよく考えて、パートナーとして代理人を見る必要があるという話です。

 

 

ネット通販サイトの違法品

運営業者に削除命令

2020年12月10日の朝日新聞に、ネット上の通販サイトで、危険な商品や違法品の出品者がいた場合、運営業者側に削除を勧告・命令でき、トラブルになった場合、出品者の情報が開示されるという新法ができるありました。

 

また、サイト運営業者の自主的な消費者保護の取り組みの公表義務や、出品する販売業者への規制強化、サイト運用業者に氏名や住所を偽ったん場合の刑事罰などもあるようです。

 

コメント

このページが、公表された資料ということだと思います。2020年12月24日に委員会が開かれ、審議されるとあります。

第11回デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会(2020年12月24日) | 消費者庁 (caa.go.jp)

【資料1】デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会報告書(骨子)案(事務局資料) (caa.go.jp)

 

各団体からのパブリックコメントが添付されています。これらのコメントも反映したものであるなら、この報告書のようになるんだろうと思います。

だいたい、新聞記事の内容が書いてありました。

 

消費者と売主の間に入り、場を提供しているだけであるので、法的な責任はないとは言えなくなります。

 

この点、楽天の場合は売り主が楽天以外と分かって買いますが、アマゾンの場合は、アマゾンが売り主なのか、その他の業者が売り主なのか、パッと見ただけでは不明です。

アマゾンには、売り主の情報を大きく分かりやすく表記してもらいたいなと思います。

 

アマゾンなら信用できるのですが、他の会社ならよくその会社のことを見てから注文したいと思います。

 

登録できない氏名商標

記事の通りと思いました

2020年12月24日の日経に、氏名が含まれる商標について、特許庁知財高裁の運用が厳しく、ブランドの海外展開の足かせになっており、法解釈の余地や条文変更も必要であるという話がでています。

登録できない氏名商標 ブランドの海外展開足かせ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • 登録できなかったものとして、「マツモトキヨシ」の音商標(CMソング)、「KEN KIKUCHI」(鳥の図形付きで、ローマ字)
  • 過去は、登録できていたものあり。「タケオキクチ」「ヨウジヤマモト
  • 商標法の条文は長年同じ。かつては異議申立がなければ柔軟に運用。ここ1~2年、解釈を厳しくする判決や審決が続いている
  • ネットで氏名が簡単に検索できることが理由
  • 条文通りに運用すると裁判所の判断が厳しくなる。特許庁もそれに呼応して厳格化

という内容です。

 

コメント

この記事は、商標業界でも話題になっています。

 

トヨタはホンダは「氏」であり、識別性(3条)の問題がありますが、こちらは使用による顕著性の立証で対応できます。

一方、氏名は「ピエールカルダン」「ポールスミス」など、ネーミングの王道ではありますが、同姓同名がいると4条1項8号で、商標登録できないことになっています。

 

商標法4条1項8号には、

「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む名称(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は商標登録を受けることができないとあります。

 

逐条解説には、人格権保護規定であることと、外国人の氏名にも適用があるとあります。

商標審査基準には、自己の氏名であっても、当該他人の人格的利益を損なうものとして、本号に該当するとあります。

 

外国の法律はというと、

韓国は、商標法34条1項6号で、著名な他人の氏名と、「著名」の制限があります。

:: choipat.com - 崔達龍国際特許法律事務所 ::

台湾は、商標法30条13で、他人の著名な氏名と、これも「著名」の制限があります。

20180628_2139171811_20180628-新商標法(2016年12月15日施行)-j.pdf (chizai.tw)

中国は、商標法32条で、先行権利としての氏名権を害する場合という規定です。

【法律講座Q&A】氏名権・名称権と商標登録の対抗 第667回 - NNA ASIA・中国・マクロ・統計・その他経済

アメリカは、商標法2条Cで、生存中の特定の個人を示す名称とあります。

【US】和 商標法2013.11改 (jpo.go.jp)

 

アメリカの運用状況、調べていると、中川弁護士の記事にたどり着きました。

「デザイナーが自らの名をブランド化する自由とその危機」の続き|Ryutaro Nakagawa|note

 

答えが書いてあります。アメリカは、審査基準で著名に限定しているようです。

 

デザイナーが自らの名をブランド化する自由とその危機ーー商標法4条1項8号のあるべき解釈をめぐって 中川隆太郎|コラム | 骨董通り法律事務所 For the Arts (kottolaw.com)

中川弁護士のこちらの記事には、工藤先生の話として、従来の特許庁の運用は、これは著名なものに限定して運用しており、異議申立を待ってい審査していたものが、ネットの普及でおかしくなっており、心配しているとあります。まさに工藤先生の心配が的中している感じです。

 

4条1項8号は、出所混同防止や誤認混合の防止を目的とする商標制度に、突然現れた人格権の保護の規定です。

もし、「きくち けん」という称呼の人が1万人いたとして、「KEN KIKUCHI」という商標登録が登録されると、他人の人格権が害されるのか、論理が不明確です。

 

冒認や、ただ乗りするのであれば、そこには有名性、著名性に基づく、経済的な利益の侵害がありますが、人格権とすると経済的な利益侵害の有無は関係ありません。

そもそも、氏名権を人格権とした点に問題があるような感じです。経済的な利益の侵害があるような有名なものだけが守られるのであり、著名商標の保護に近いものと再設定することが必要なように思います。

 

1万人の「きくち けん」の一人が、後で同じ商品で商売をするときに、同じ名前での商標登録は取得できませんが、自己の氏名ですから商標法26条で使用はできます。

商標が欲しければ、別の名前を採択すれば良いだけです。

 

 

最近、カナダの調査結果を見ていると、従来、カナダの審査官は識別性の審査権限がなかったのですが(これは驚きです)、法改正で識別性の審査ができるようになり、審査官が一生懸命ネットで検索して、識別性なしという理由をこじつけてくるというのが記載されています。

ちょっと、これを思い出しました。

 

 

 

 

 

 

 

偽ワクチンの出現

早くも出現

2020年12月22日の日経に、フィナンシャルタイムズの記事として、新型コロナウイルスのワクチンの偽物が販売されているという記事がありました。

対コロナ、つけ込む闇サイト: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • イスラエルのサイバーセキュリティ企業が、インターネットの闇サイトで約2万6000円で販売されていることを発見
  • また、中国企業が開発したワクチンを2回分で750ドルで販売するという広告
  • 多くは偽物か、注文しても送付されない
  • 国際刑事警察機構等が、ワクチン犯罪の激増を警告
  • ワクチンが盗まれる、優先者であることの証明証の売買市場が出現

などいう内容です。

 

コメント

「偽」という言葉に反応してしまいました。バイアグラも偽物が出回りましたが、人気のある薬などは直ぐに偽物がでるようです。

 

今なら、新型コロナのワクチンが市場に出ているだけで偽物くさいと判断できるので、買う人は少ないでしょうが、世の中には騙されて買う人もいるかもしれません。

もう少したって、周りにワクチンを接種した人が増えてくると、ワクチンがだんだん身近に感じられてきて、騙される人が増えるのかもしれません。

 

法的には、商標権侵害や不正競争防止法の違反というよりも、第一義的には詐欺ですね。

さらに、今回の事例なら、中国企業の名称などを使っていると、そこが商標権侵害や、不正競争防止法違反になるのだろうと思います。

 

注目したのは、金額です。約2万6000円、2回で750ドルという金額です。現在、ワクチンの接種がはじまったばかりなので、希少価値が高いのですが、その状態でもこの程度の金額です。ビックリする金額ではないようです。

 

実際は、政府の予算で無償化したりするので、一般に届くころには、実際は相当、安くなると思われます。

また、時間はかかると思いますが、大量に供給はされるとすると、この偽物の金額はより安くしないと誰も買わないということになります。

そうなると、この偽物ワクチン業者は値下げをしないといけなくなります。

今回の偽物は、あまり儲からないような気がしました。

 

それよりも、本物のワクチンの窃盗の方が心配です。記事にもありますが、製薬業界は、定期的な監査、供給網の検査、配送中の人との接触減、などを計画しているようですが、こちらは関係者の横流しも起こらないように、現金輸送をするときのような対応が必要になりそうです。

ワクチンを配送する救急車に、セコムの人に同乗してもらうようなことが必要かもしれないなと思いました。

 

 

2つの類似品にご注意くださいの広告

ブロッコリースプラウト龍角散

2020年12月23日の日経に、村上農園の「ブロッコリースプラウト」の1面広告と、別のページには龍角散の「龍角散ダイレクト」の広告があったですが、双方とも、メインのコピーは、「類似品にご注意ください」でした。

 

意図して同じ日に同じ「類似品にご注意ください」のコピーの1面広告が2つきたのか、日経の広告局の人の匙加減なのか、よくわかりません。

この2つの広告を見た時に、一瞬、ついに日本も中国のように模倣品被害大国になったのか?!と思いました。

 

ポイントは「類似品」という言葉のようです。

 

中身を読むと、村上農園のブロッコリースプラウトの広告が言っているのは、ブロッコリースプラウトの効能は、ジョンズ・ホプキンス大学の研究成果で「スルフォラファン」という有効物資が、ブロッコリースプラウトブロッコリーの新芽)にあることを発見したことによるそうですが、どのブロッコリースプラウトにあるのではなく、ほとんどスルフォラファンを含まないものもあるそうです。

 

村上農園のものは、ジョンズ・ホプキンス大学の栽培方法もま守り、検証を受け、認証マーク(Brassica、ブラシカ)を付けているとあります。

 

一種の技術ブランディングですが、村上農園の整理による類似品と真正品の違いなどが良く分かりました。

知らなきゃソンする、ブロッコリースプラウトのすべて|村上農園 (murakamifarm.com)

 

類似品に注意と言われてしまった他のブロッコリースプラウトですが、有効成分は少ないものの、ブロッコリースプラウトであるいことは間違いないので、有効成分が少ないことを承知なら、買っても何ら問題なないことになります。

有効成分量の違いがあるなら、この広告は正当化されるかなと思いました。

今日、スーパーで見ると2倍の価格差があります。

 

一方、龍角散ですが、こちらも「類似品にご注意ください。」なのですが、龍角散がいうところの類似品の説明がありません。

ただ、類似品との区別をするには、パッケージを確認する、商品名を確認する。製造販売元を確認する。とあるだけです。

 

ちなみに、龍角散PM2.5の対策で、中国で人気商品になっているようであり、また、まいどなニュースに記事があった程度です。

 

まいどなニュースの「これではゴホン!といえない・・・中国でのど飴の偽造品出回る」の記事にあった記事は、中国の模倣品の話は、「龍角散のど飴」の話であり、「龍角散ダイレクト」の話ではありません。

 

また、中国と日本は市場が違うので、龍角散は何と何を比較しているのか不明です。

言葉の検索条件を変えて検索をして、画像を確認したりしましたが、Web検索では、龍角散ダイレクトの模倣品は発見できませんでした。

 

類似品、偽造品、模倣品についての広告は、エビデンスを元に、消費者に対する注意喚起が必要ではないかと思いました。

下手をすると、「龍角散ダイレクト」は模倣品がでてくるほど有名な商品です、と言っているだけの広告になってしまいます。

何かちょっとすっきりしません。

 

 

 

年金のシミュレーション

弁理士企業年金基金セミナーに参加して

2020年12月5日に、弁理士企業年金基金セミナーに参加しました。事務所に転職して以来、毎年、案内をもらうので、今年、はじめて出てみました。

 

事前に年金の基礎番号をしらせたり、委任状を提出したりして、基金の方は日本年金機構年金事務所に問い合わせて、将来受け取る年金額をシミュレーションしてくれたりしています。

 

そのところ、ちょうど、日本年金機構ねんきん定期便も来ました。

 

両者を比べると、厚生年金部分の年金が少し違います。その理由は、ねんきん定期便は60歳まで現在と同じ条件で継続することを前提にしていますが、年金事務所の試算では65歳まで働くことが前提になっています。

 

さて、

年金セミナーは、元野村証券の人で、現在は年金セミナーの講師をしているという70歳の方の話でした。

 

話は多岐にわたるものであり、どれも相当面白い話をされていたのですが、特に、強調されていると思った話は次のようなものです。

1.現在は、マクロ経済スライド調整率というものが導入された。これは、加入者が減り、平均余命が延びることに対応したもの。結果、平均余命は伸びているが、被保険者数は予想に反して増加している。これは高齢者の再雇用や定年延長が原因。そのため、+0.2%と-0.3%で、-0.1%に収まった。

2.人生は90年と考える

3.片働き世帯は、老齢厚生年金だけでは約3.7万円/月の不足がでるが、65歳で約1000万円の貯金があれば足る(総務省の消費実態調査から)

4.一方、ゆとりある生活をするためには、65歳で約4000万円が必要(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」から)

 

生活の仕方で、必要な資金もだいぶ違うようです。

 

一番、面白いと思ったのは、政府等の予想に反して加入者が伸びて、スライド調整率が-0.1%で収まったという話です。

高齢者の再雇用、定年延長は、こういう影響もあるんだなと思いました。

 

専門家ではないので、正確はことは言えませんが、今後、パートの仕事でも厚生年金に加入する人が増えると言いますし、働き方改革で残業規制などがかかると、雇用は増える傾向になるのではないかと思いますので、厚生年金の加入者は、しばらく増えるのではないかと思いました。

 

昨日の残業規制の話は、命や健康のためとか、国際的な比較での生産性の低さをアップするためとか、ワークシェアリング的な発想とか、女性の就労促進とか、いろいろと理由があると思いますが、何か政府の施策が一貫性があるような気がしてきました。

 

年末調整での配偶者控除の変更も、同じ方向を向いていると思いました。複雑系ですが、よく考えられています。

年間360時間の残業規制

達成するにはIT化が必須?

2020年4月から中小企業でも、残業時間が360時間/年となっています。厚生労働省のWebサイトにある、「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」によると、次のような説明があります。

時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)

https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/img/overtime/000463185.pdf

時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
□臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・時間外労働 ・・・年720時間以内
・時間外労働+休日労働 ・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要があります。
□原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。
□法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。
□大企業への施行は2019年4月ですが、中小企業への適用は1年猶予され2020年4月となります。

大企業と違い、中小企業では今年の4月からの導入でした。

 

年360時間というのは、月に直すと30時間ですが、自分の仕事を振りかえっても、2019年まではそれではとても足りませんでした。

2020年4月以降はコロナ禍があり、依頼件数が少し減ったり、中間処理も少し減ったりして、この数字には収まったように思いますが、もし、オリンピックで景気が良かったりすると、本当に対応できたのかという気がします。

 

大企業は、2019年4月から残業規制がかかっていますし、時間のかかる作業を外注することもできるのですが、外注先の中小企業である特許事務所では更に外注することはできません(翻訳や明細書作成などはありますが、外国商標では、これがありません)。

特許事務所のような中小企業が生きるには、IT化して無駄を省くしかないのですが、如何せん、外国商標ではあまり進んでいないように思います。

 

外国商標では、登録証原本の送付が必要なことや、外国の代理人でまだ紙の報告書とする国があること、商標担当が文科系だから原因が考えられます。ペーパーレスも特許に比べて遅れています。

そこに今回のコロナ禍で、一挙にお客さんが外国商標のペーパーレス化を進める動きが出ています。

 

将来的にはRPAなどで、単純な入力作業から解放されることもあるかもしれないのですが、今は、事務所のシステムとお客さんのシステムに2重に入力が必要な状態であり、事務管理が大変な状態になっています。

 

この状態で、上記の残業規制がかかっているのです。

 

企業で商標管理をしていたのは、2005年頃までなので、15年前までなのですが、当時の私の仕事では特許事務所に見積もりを求めるのは、ハウスマークの権利化で大量補強出願をするとき程度でした。

通常は、事業部に聞かれても、外国商標の場合、1商標につき、調査1ヵ国1分類10万円/出願1ヵ国1分類20万円/企業内の管理費と特許事務所費用と現地費用込み。この程度の説明でOKでした。

 

これが昨今、見積もりのラッシュです。国内商標の見積もりは簡単なことが多いですし、国内事務所費用も簡単ですが、現地の費用はアワリーや雑費などの変動要素が多く、実際やってみないと分かりませんし、正面から現地に確認しても、結果は違うことが多いのです。

この見積もり、仕事が確定している場合は良いのですが、合い見積もりの場合は、折角何時間もかけて見積もりをしても、仕事が来ないこともあります。しかも営業の一種とみなされ、無償です。

 

企業の知財部門も、経理から毎年予算〇%カットなど、厳しいことを言われているはずですが、特許事務所では、メーカーと異なり、原材料を大量購買すると安くなるということもできず、相変わらずの人海戦術が基本です。しかも、人件費は上昇します。

 

唯一の希望がIT化です。しかし、多くの企業の知財部と同様、特許優先で商標は後回しになりがちです。

 

一旦、きっちりと仕組みを作り直し、広い意味でのシステムを変える時期になっているなと感じています。

この調子でいくと、おそらく外国商標のできる事務所の寡占化が進みます。

 

英国系の商標更新管理のCPAなどはもともとその発想ですし、ANAQUAも企業の商標担当が相談して作ったものです。

外国商標をやっている中小の事務所や場合によっては企業が、システム開発などのアライアンスを組むなども必要なように思います。

 

何とか、事務所と企業のシステムに、同じ内容を二回入力するのは止めたいなと思います。