Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

HuaweiがVerizonに10億ドルを請求

200以上の特許使用料

2019年6月14日の朝日新聞に、ファーウェイがベライゾンに、200以上の特許について、10億ドル(1080億円)の使用料を請求しているという記事がありました。

ウォールストリート・ジャーナルなどが報じているようです。

 

  • ファーウェイは、通信機器からIoTまで、広範な特許使用料をベライゾンに要求
  • ベライゾンは、この問題はベライゾン1社の範囲を超えるもので、地政学的ながれの中で、産業全体に影響があり、国内外の関心を呼び起こすとコメント
  • ファーウェイは、コメントなし

とあります。

 

コメント

大きな金額の請求です。

しかし、ファーウェイがアメリカで製品を販売していれば、アメリカ企業からのカウンターも恐いですが、製品を販売できてない状況下であれば、アメリカ企業からのカウンターも恐くないので、今後も、どんどん特許訴訟になりそうな気がします。

 

何より、現在まだ4Gの段階で、10億ドルです。

今後の5Gで、ファーウェイの特許のポートフォリオが更に強化されているとすれば、これからの方が、ファーウェイの特許は脅威になると思った方が良いのではないでしょうか?

例えば、China IP magazineを見ていると、ファーウェイの5Gの必須標準特許の数は、28.9%で世界1位です。

http://www.chinaipmagazine.com/en/journal-show.asp?id=1557

分野によっては、ファーウェイの特許の比率は、77.26%とあります。

 

これは、5Gの時代は、ファーウェイ抜きには考えらない時代であることを示しているように思います。

おそらく、5Gの時代は、10億ドルどころではない請求がファーウェイからなされるのではないでしょうか。

 

関連で、米上院議員のルビオ氏が、ファーウェイのような制裁対象企業は米国で特許の侵害訴訟提起を含む救済を求めることができないという法案を提出していることも話題になっています。

Senator Rubio targets Huawei over patents - Reuters

 

元々、ファーウェイの問題は、バックドア問題で、ファーウェイ製のルーターなどの通信機器が、中国による米国のスパイを招くという安全保障問題がだったのですが、しだいに経済問題になり、最後は特許問題に波及してしまったという感じです。

 

第二次大戦前後、昔のドイツのイーゲーとスタンダード石油の間の、石炭から石油を作る特許や、合成ゴムの特許は、政治の対立とは別に、ドイツ企業と米国企業が裏で手を結んでいたりしたようです。イージーには、第二次大戦中も米国企業から特許使用料が支払われていたそうです。(井上岳史「特許が世界を塗り替える」NTT出版

 

5Gなどは、ちゃんとした団体があり、オープンなので、そんなことはないと思いますが、今回の問題も、5Gの標準特許の団体から、ファーウェイの離脱があると、一体どうなるのかなという気もします。

これも想定しておかないといけないかもしれません。

そうなった場合、5Gがストップすることはなくても、より高額の特許使用料争いになる可能性があります。

 

WTOの恩恵を中国が受けたのは間違いないのですが、WTOが立ち往生して、TPPになり、そこまでは良かったのですが、トランプ大統領になり、America first政策がTPPを蹴散らしてしまいました。

米中の貿易戦争は、しばらく続くのでしょうが、特許はどうなっていくのかという感じがします。

 

ルビオ上院議員の法案は、権利があっても権利行使できないというものですので、これは強烈です。

もし、この法案が、成立するようなことになれば、WTOのパネルでの紛争処理になるのでしょうが、WTOの裁定があっても、アメリカが従うかどうかは分かりません。

 

制裁対象には、東芝機械のココム違反のようなものもあり得るので、リストアップされることが日本企業にも絶対ないとはいえません。

この法案は、成立はしないタイプの法案だとは思いますが、もしも成立しそうなときは、日本企業、経済産業省特許庁弁理士なども反対の声を上げるべき法案ではないでしょうか?

パリ条約の内国民待遇の原則まで否定されているような感じがします。まだ、イージーとスタンダード石油の特許契約の方が、特許への信頼がある分、ルビオ案よりは、ましなような気がします。