Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その30)

品質誤認的商標(16号)、ぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する商標(17号)、立体の機能的形状(18号)

 

まず、品質誤認ですが、商品の「品質」又は役務の「質」とは、商品又は役務の特性という程度の広い意味です。

品質、質の良否についての誤認と、他の種類の商品・役務との誤認があるとあります。

産地又は役務の提供場所の詐称が、商品・役務の出所の誤認に留まる場合と、商品・役務の品質(質)の誤認につながる場合があるとします。

これは絶対的不登録理由です。

この規定は、公益保護のためのものであり、除斥期間の適用があります(47条)。

あとは、審査基準の解説です。

 

次に、ぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する商標ですが、TRIPs協定23条の2の規定に基づくものとあります。

相対的不登録理由です。

 

最後の立体的形状については、「機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる」の言葉で、3条2項との調整をしているとあります。

相対的不登録理由です。

 

コメント

新しく追加されてきた、17号、18号は特にコメントもないのですが、16号は、3条の識別性とセットで適用されることが多い条文です。

審査基準では産地のことを中心に説明しています。

 

審査基準に、商品「イギリス製の洋服」について、商標「JPOイギリス」というものは、本号に該当しない例として挙がっています。

 

産地自体を普通に用いられる方法で表示しても、3条1項3号で拒絶されますが、商標の中に一部分で存在するだけで、他に特別顕著性のある部分のあるときは、3条はパスするので、そのときは、この4条1項16号で対応する。

ただ、4条1項16号では、本当にその産地の場合は、商品を「イギリス製の洋服」などとすることで、品質誤認が生じないときは、パスできるというものです。

 

4条1項10号~15号という私益的不登録理由のあとに、16号という絶対的不登録理由が出てきており、

そのあとは追加された、相対的不登録理由です。

 

16号の場所としては、本当は、博覧会の賞(9号)のあとぐらいが適当な感じがします。

将来法改正があるとすると、絶対的不登録理由と相対的不登録理由は、別々に規定することになると思いますが、16号の内容は、絶対的不登録理由の最後あたりに来るのではないでしょうか。

 

公序良俗の7号も、絶対的不登録理由の総括的な条文ですが、商標の構成面から見た7号と、商標と商品・役務の品質(質)から見た16号という整理でしょうか。

 

小野先生の書き方で面白いなと思ったのは、赤で記載した部分です。

産地又は役務の提供場所の詐称が、商品・役務の出所の誤認に留まる場合と、商品・役務の品質(質)の誤認につながる場合がある。

特に下線の部分ですが、出所の誤認と記載しています。これは、生産販売会社の誤認(他人との誤認)ではなく、場所の誤認です。

この場所の誤認については、それによって、商品・役務の品質(質)の誤認につながる時は16号に該当しますが、単なる商品・役務の出所の誤認の場合、登録になるのではないかと考えてしまいました。

おそらく、特許庁的には、商品・役務の誤認の出所の誤認=商品・役務の品質(質)の誤認、と考えていると思いますが、面白い指摘だなと思いました。