Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

画像のリツイート

著作者人格権侵害との最高裁判例

2020年7月22日の朝日新聞で、ツイッターに無断投稿された写真をリツイートしたら、ツイッターの使用で自動的にトリミングされ、撮影者の氏名が見えなくなり、著作者の氏名が表示されなくなっていることが、「著作者人格権」の侵害にあたるという、最高裁の判決があったとの記事を見ました。

 

●結論:

上告人であるツイッター社の上告棄却。リツイートした人のメールアドレスの開示をツイッター社に命じる

●理由:

リツイートにより、「転載厳禁」と書かれた上部と男性の氏名の書かれた下部が切り取られて表示。(これはツイッター社の仕様)

●裁判長補足意見:

ツイッターに「利用者に対する周知など適切な対応が期待される。」とツイッター社に対応を促す

●反対意見:

「利用者に大きな負担を強いる」として反対意見あり

●背景

原告の男性は、無断投稿とともに、このリツイート時のトリミングを問題視し、プロバイダー制限責任法に基づき、投稿者の特定を求めて提訴

一審から、無断投稿のツイートは、著作権侵害。しかし、リツイートについては、一審はリツイート者は侵害の主体でないとして、著作権著作者人格権の侵害の何れも否定

二審では、リツイートにつき、著作権侵害は否定。トリミングによる画像改変と、著作者名表示のなくなったことが、著作者人格権の侵害と認定

最高裁は、「仮に重いを感じられたとしても、出版やほかのネット上の投稿と異なった解釈をすべき理由にならない」とし、高裁を支持

 

コメント

裁判所のサイトでも、この判決は公表されていました。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/597/089597_hanrei.pdf

 

ツイッター社は、トリミングをすることなく、画像をそのまま表示することが求められそうですが、グローバルな仕様なので、日本のツイッターのためだけに仕様変更はできそうにありません。

 

今後、写真付きのツイートをリツイートする人は、著作者人格権侵害として、投稿者名の特定がされ、掲載停止のemailを受ける可能性を認識しながらリツイートする必要があります。

 

ただ、無断転載してしまった元のツイートの画像が削除された場合、そのリツイートは画像がなくなるのではないかという気もしますので、リツイート者が沢山いる場合に、本当に掲載停止のemailが送られるのかは疑問なような気はします。

 

ツイッターというとトランプ大統領は最大限活用しています。政治的な利用が多いSNSです。

リツイートに関しても、表現の自由の論点が何か出ていないのかなと思いましたが、特に記載ぎありません。純粋な著作権著作者人格権の事件として処理されています。

今回は、元々が「スズラン」の写真ということのようで、特に政治的な意図のある写真ではなかったのですが、政治的な写真なら、表現の自由の議論になったのでしょう?

 

日本の最高裁判例が出ても、米ツイッター社が、簡単に仕様を変えるとも思えないのですが、この判例の活用次第では、ツイッター利用の萎縮効果があるように思います。

 

ネット上では、判決に対する批判する記事が多いようです。