Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

読んでみました

「社長、商標登録はお済ですか? Ⓡの逆襲 商標登録で成功する経営者、失敗する経営者」

 

上記タイトルの本を読みました。 

ダイヤモンド社の本です。以前は、今勤務している事務所の創業者の木村三朗先生やその後の大村昇先生の、「商標がわかる12章」「商標とサービスマークがわかる12章」を出版していた出版社です。

 

会社で商標管理をしていたとき、後輩が「商標とサービスマークがわかる12章」を愛読していたようでしたので、一定の読者がいた本です。

そのダイヤモンドの本ですので、現在の標準的な教科書になるのかな、と思って読みました。

 

筆者は理系大学を出た、企業出身の弁理士です。7年連続日本一の出願で2000件/年とあるので、すごいボリュームの出願をしているようです。

 

本の想定読者は、35歳のスタートアップの社長に設定しているとありますが、そのような想定読者を通じて、日本の商標制度や商標実務を網羅的に説明しているという感じでした。全体像を理解することは重要なので、これはこれでありだなと思いました。

 

登録査定という言葉を使わず「合格」としてみたり、ビジネスやマーケティング的な説明が入っていたり、35歳の社長を念頭においたようなところもあります。

 

実際の社長がこの本を読まれるのか、会社で商標の業務をすることになった担当者が読むのか、読者はどちらなのかなと思ったりします。

おそらく昔の「商標がわかる12章」は、企業の商標を担当することになった人を念頭に置いていますが、この本はよりスタートアップの経営者を念頭においているのだろうと思います。

 

タイトルは煽るような感じのするものですが、ところどころ、商標登録(出願)を強く勧めるところがあり、タイトルに近い内容になっているところがあります。

 

この本に書いてある内容は、企業の知財部で商標担当になるときに、知財協会の研修などで勉強する内容ですので、企業の商標担当者はご存知の内容とは思いますが、最近は、要領よくまとめらた簡単な解説書がすくないなという気がします。

まったくの初心者に、「青本の商標を読め」では、ちょっとなと思います。

替わりになるのは、特許庁の標準テキストはもう無いようですし、知っておきたい特許法ぐらいでしょうか?

 

小野昌延先生の日経文庫の「商標の知識」、江口俊夫先生の「商標法概説」、木村三朗先生・大村昇先生の「商標とサービスマークのわかる12章」ぐらいのボリュームの本が必要ですので、そのような読者にもちょうど良いボリュームなのかもしれません。

 

この本にないのは、外国商標の話、ライセンスや模倣品対策の話、商標管理の話ですね。商標管理は事務管理ではなく、広い意味での企業における商標の運用です。

商標管理に焦点を当てた本は、昔の日本生産性本部の「商標管理」や萼優美先生の「商標管理(TRADEMARK MANEGEMENT)」、小野昌延先生の「商標管理入門」ぐらいしか見たことがありませんが、いかんせん古いので、現代の商標管理を正面からとらえた本が必要だろうと思います。