損保ジャパンが発売
2021年4月29日の日経に、損保ジャパンが、知的財産権侵害の損害賠償金を支払う保険をスタートしたという記事がありました。
損保ジャパン、知財侵害の賠償金補償: 日本経済新聞 (nikkei.com)
- 意図せずに第三者の知的財産権を侵害した場合に生じる賠償金を補償する保険
- 4月に発売
- 全世界の知財トラブルを対象
- 対象は、特許権、商標権、意匠権、実用新案権
- これまでは、訴訟費用を補償する商品のみ
- 今回は賠償金を補償する
損保ジャパンのWebサイトに、ニュースリリースが出ていました。
【公式】損保ジャパン (sompo-japan.co.jp)
知的財産権賠償責任保険」の販売開始_損保ジャパン (sompo-japan.co.jp)
- 名称:知財賠償責任保険
- 2020年に施行された改正特許法等により、ライセンス実施料相当額等を損害額の判断の要素として考慮できる。知的財産権侵害が認められた場合の損害賠償額が高額化する
- 従前、第三者の知的財産権を侵害した際に生じる争訟費用を補償する商品を販売
- 今回、第三者の知的財産権を侵害した場合に生じる法律上の賠償責任についての賠償金を補償
- 第三者の知的財産権侵害に起因する自社の喪失利益の補償は業界初
- オプション補償として、
- 知的財産権に関するライセンス契約等で約定された事項に起因する賠償責任
- 不正競争防止法違反に起因して、被保険者が負う法律上の賠償責任
- 製品やサービスの使用差し止め等を命じられた際に被る喪失利益
- 製品を市場から回収するために要する費用
とあります。
コメント
訴訟費用を補償する保険は、あるのを知っていました。訴訟費用だけでも高額になるので、保険に入る意味はあると思いますが、どの程度活用されているのでしょうか。
今回は、訴訟費用だけではなく、損害賠償金です。しかし、見たところ、和解金は入っておらず、訴訟で決着がついたものだけのようです。
和解金までいれるのが次のステップでしょうか。
感覚的な話ですが、
米国などでは、米国では判決がでるときは非常に高い金額になりえます。これに対して、これまでの日本の判決は、損害賠償金額自体は、低めの金額でした。
この保険では、今後、日本の損害賠償金額も高額になると見込んでいるようです。
大企業的な感覚的にいうと、催告が1000件あえって、訴訟に行くのが5件。訴訟が5件あって、判決まで至るのが1件。というぐらいのイメージとします。
この1000分の1のために、保険に入るのではなく、自社内で積み立てる、助け合う、という方法もありそうです。
一方、中小企業の場合、係争事は「名誉」のために、和解よりも判決を望むといいますし、クロスライセンスや、後々の企業同士の付き合いを考える大企業とは違う要素がでてきます。
そのため、中小企業でいうと、先ほどの1000分の1が、100分の1や50分の1になる可能性があります。
また、大企業の場合は、企業全体としては、複数ある事業トータルで凸凹を見ることができますが、中小企業の場合は、事業数が限られているので、自社内で調整することは難しいように思います。
この保険は、中小企業で有用性が高そうだなと思いました。
しかし、保険金額を計算するのは、至難の業です。加入者が多くなると、経験則的に計算することはできるようになるのでしょうが、加入者が少ないうちは、それはできません。
どのぐらいの保険料になるのでしょうか。