スペシャル301条報告書
2021年5月1日の日経(夕刊)で、米通商代表部(USTR)の貿易相手国の知的財産保護に関する年次報告書についての記事がありました。
- 中国は2020年に貿易協議の「第1段階の合意」で知財保護を強化すると約束したが、根本的な変化が不足していると指摘し、合意内容の順守を求めた
- 報告書のタイトルは、スペシャル301条報告書。各国の知財の現状を分析
- 中国を「優先監視国」に引き続き指定
- 中国の技術の囲い込み、技術移転の強制、知財権を持つ企業が不公正に扱われることへの懸念
- 中国の履行状況を確認する米中閣僚級会合は、バイデン政権では開かれていない
とあります。
コメント
- 1974年通商法301条の知的財産権についての特別版。スペシャル301条と呼ばれる
- 通商法は、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)に、大統領や連邦議会に対して外国の貿易障壁に関するレポートを義務づけ
- スペシャル301条は、レポートの提出後30日以内に、知的財産権保護について問題ある国や慣行に関する報告書(「スペシャル301条報告書」)を公表することを定めている
- レポートでは、知的財産権保護について問題のある国を、問題の大きな順から「優先国」「優先監視国」「監視国」の3段階に指定する。
昨年の情報ですが、最近は、次の国が優先監視国になっているようです。
【優先国】なし
【優先監視国】アルジェリア、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、ロシア、サウジアラビア、ウクライナ、ベネズエラ。
【監視国】バルバドス、ボリビア、ブラジル、カナダ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、グアテマラ、クウェート、レバノン、メキシコ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、ルーマニア、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ、トルクメニスタン、アラブ首長国連連邦、ウズベキスタン、ベトナム
米USTR、中国、インド、インドネシアに対する懸念を強調、スペシャル301条報告書(インド、インドネシア、中国、米国) | ビジネス短信 - ジェトロ (jetro.go.jp)
優先監視国といっても、中国だけではありません。インドやサウジアラビアも指定されているようです。
とあります。
JETROの上の記事によると、同報告書での日本についての言及は、薬価基準への懸念があるようです。厚生労働省や財務省が薬価引き下げを行うと、アメリカを怒らせる可能性がある問題のようです。
日本は、1994年から1996に、優先監視国だったそうです。25年前です。四半世紀前の話になってしまいました。
さて、これから米中関係がどうなるのか、簡単には見通せませんが、基本的には共和党政権よりも、民主党政権の方が、対外への主張は強いので、バイデン政権はトランプ政権以上に中国に対して強い要求をしそうです。
30年かけて中国に大量に工場進出してしまった日本企業は、簡単に日本には戻れませんし、他のアジア諸国に市場や工場を移転するにも、時間やコストがかかります。また、中国の市場が元気がなくなると、困る日本企業も沢山あります。
日米の通商摩擦も、2000年代になると収まったように、米中の通商摩擦もいつかは収まるのではないかと思います。
それまで、できるだけ被害がすくないように、立ち振る舞うというのが日本の戦略でしょうか。