Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

KIMONOの商標登録

キム・カーダシアンの新ブランド

2019年6月27日のBBC News Japanに、キム・カーダシアン・ウエストさんの矯正下着のブランド名が、「KIMONO」と発表されたことに対して、批判が起こっているという話があります。

下着ブランド名に「キモノ」、日本文化への侮辱と批判が殺到 米タレント - BBCニュース

  • 矯正下着のブランド名に「KIMONO」という名称を使用
  • 日本の伝統的な着物を侮辱しているとして物議
  • ソーシャルメディア上では、矯正下着ブランド名に「KIMONO」を使用することは、伝統的な着物を軽視しているとして、多くの日本人が反発
  • 着物や日本文化への敬意がない
  • 単に自分の名前にかけたダジャレとして使われている
  • 9つの色を展開する「KIMONO」矯正下着は、9色展開
  • 自分の肌の色味に合う矯正下着が見つからなかったことへの解決策
  • XXSから4XLまでサイズがあり、サイズと多様性
  • 矯正下着に、それとは正反対の特徴を持つ着物と同じ名称を使うことは皮肉
  • 批判はハッシュタグ「KimOhNo」(着物と「キム、オーノー=キム、やめて」)
  • 「KIMONO」という名称を、日本文化とではなく、カーダシアン・ウェスト氏と結びつけて考えるようになってしまうのではないかと懸念

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この矯正下着、強いインパクトのある商品です。商品は、良いものなので、売れるのかもしれません。

今回は、下着と着物の関係性、日本文化への敬意という話なので、単なる商標問題ではありません。

 

まず、着物は上品、下着はそうでないとも言えません。下着メーカーからすると、下着も大切な商品です。

ただ、下着に着物「KIMONO」と命名されて、怒っている人がいるのも事実です。国際問題になってもおかしくないですが、そこまで大問題にならないような気もします。

 

キム・カーダシアンさんが、批判を受けて「KIMONO」の使用をやめるのか、良い宣伝になったとして、継続するのか、現時点では不明です。双方の選択肢がありえます。批判の収束状況を見て、決めるのかもしれません。

 

弁理士としては、米国で、商標登録が取れるのかどうかが、気になるところです。特に、「THE SLANTS」の最高裁判例がありましたので、商標の採択と表現の自由は、最近、問題になっており、この問題も同じようなところがあります。

日本的にいうと商標の採択そのものが、公序良俗違反になるかどうかというところです。

 

商品がよほど離れれば、KIMONOをブランドとして使っても問題ないのでしょうが、着物も下着も、上位概念的に考えれば、同じ被服なので、問題も生じやすいというところです。

 

日本の類似役務審査基準を見ると、被服という大概念の下に、洋服、和服、下着があり、おのおのは、非類似商品となっています。商品非類似は、そうだろうと思います。

 

では、もし、日本で「KIMONO」が、商品「下着」に商標出願されたとしたらどうなるでしょうか?おそらく、商標法3条1項3号(記述的商標)と4条1項16号(品質誤認)で、拒絶されます。

 

アメリカなので、日本ほどは、「着物」、「きもの」、「KIMONO」についての、知識がないという前提でも、拒絶される可能性は十分あります。

特に、今回は、BBCでも取り上げられたような話なので、USPTOもそれなりに対応するのではないかと推測します。

 

キム・カーダシアンさんや、KIMONO INSTIMATESの登録がないか、USPTOのサイトで見たのですが、出願中のものしか発見できませんでした。様子を見ないと仕方ない状態です。

 

「KIMONO」単体ではなく、「KIMONO~」なら、登録は可能かもしれません。KIMONOズバリではないので、日本文化への被害も少ないと思います。

 

ただ、古い権利で、「コンドーム」に「KIMONO」が登録されているものは発見しました。登録第3323756号です。これは、LIVEですので、現存している権利です。実際使用しているようですし、26年以上使っているとあります。

Thin Condoms - The Official Kimono Condoms Website 

 

26年前は、SNSもないですし、商品は相当離れているので、異議を仮にやっても、負けた可能性が高いですし、何も言う方法がなかったというところでしょうか。

 

着物業界にとって、キム・カーダシアンさんの権利よりも、こちらの方が、問題なような気がしますが、これをひっくり返すのは、今となっては、とても難しいと思います。

知的財産管理技能士

1級ブランド専門業務の試験問題

ブランドマネジメントについての検定のようなものがないかと思って、調べていると、知的財産管理技能士の1級にブランド専門業務というものがありました。

国家試験 知的財産管理技能検定 ホーム

 

この資格については、Wikipediaにまとめがあります。

知的財産管理技能士 - Wikipedia

  • 技能検定制度の一種で、国家資格
  • 略称は、知財技能士
  • 厚生道大臣が指定する指定試験期間が実施
  • 学科試験と実技試験がある
  • 一般財法人知的財産教育協会が実施
  • 2008年に技能士に追加
  • 技能の内容に応じ、3級、2級、1級に区分
  • 区分および試験範囲は、経済産業省知財人材スキル標準(IPSS)」に準拠
  • 1級は学科試験に合格後、翌々年度までに実技試験に合格すれば1級技能検定の合格者となる
  • 1級の実技試験は、口頭試問

 

試験科目は、

1級(ブランド専門業務)
  • 1.リスクマネジメント
  • 2.契約
  • 3.エンフォースメント
  • 4.資金調達
  • 5.価値評価
  • 6.関係法規
  • 7.ブランド専門業務
    • 7-1.ブランド戦略
    • 7-2.情報・調査
    • 7-3.国内権利化
    • 7-4.外国権利化
    • 7-5.ブランド関係法規

とあります。

 

知的財産管理技能士の数は、97,527名とあります(延べ)。複数の級がありますので、重複があると思いますが、この数は、知財協会加盟各社の知財担当者数が、10万人程度と聞いたことがあるので、それに匹敵する数であり、一大勢力です。

ちなみに、弁理士の数は、2019年5月末段階で、11,789名です。

 

試験内容も、1年分は、Webサイトに載っていました。

国家試験 知的財産管理技能検定 過去問題

 

学科試験の方の、最初の3問が、ブランド戦略の設問になっており、はじめて、ブランド戦略の試験問題をみました。

こんな感じなら、問題が作れそうですが、ブランド戦略は、法律と違い根拠になるものが無いのが辛いところです。

ケラーの本からの出題が良いところでしょうか?

 

あとは、商標法、不競法、税関登録の問題ですが、英文のライセンス契約書が出ていたり、ドメインネーム、模倣品対策、キャラクター、アメリカ商標法やEUTMなどの問題があったりもします。

 

弁理士試験の問題よりも、より実践的です。

 

企業で、商標実務をやっている人に有利な問題が多いような感じですが、中には、特許事務所で、商標実務をやっている人に有利な問題もあります。

総合すると、商標関係で、なんでもやっている人が合格するというものでしょうか。

 

実技試験の口頭試問は、商標法の問題でした。

 

1級の合格率は、7%とあります。マークシートの筆記試験80%以上で合格とありますので、商標を専門にやっている弁理士でも、ちゃんと勉強しておかないと、合格しないのではないかというレベルです。

 

なお、この実施団体は、知的財産教育協会とあります。

Wikipediaには、

2016年4月1日付で一般財団法人知的財産研究所と一般社団法人知的財産教育協会とが合併し、一般財団法人知的財産研究教育財団となり、知的財産教育協会はその下部組織とあります。

 

昔、発明学会の特許管理士というものがありましたが、この技能検定は、より公に近いもののようです。

 

企業、特に中小企業で、知財管理をする人のための試験ということではありますが、裾野が広がることは、良いことなんだろうと思います。

ちなみに、ブランド専門業務の合格者数は、192名とあります。特許でも1級は、1,803名で少ないのですが、ブランドは、非常にレアです。

 

たとえば、弁理士でも商標の専門性の高くない弁理士は多いと思います。

ブランド専門業務の1級は、商標に強いということの証拠になるかもしれません。

法科大学院の法改正

最短5年で卒業、在学中に受験可能

2019年6月20日の日経に、法科大学院改革の記事がありました。

法曹コース 5年で修了 法科大学院改正法成立 資格取得、最短8年から6年に :日本経済新聞

  • 法学部・法科大学院を計5年で修了できる「法曹コース」創設
  • 司法修習の1年を入れて、最短で、従来8年かかったものが6年になる
  • 法曹コースは、2020年度から
  • 3年で学部を卒業。法科大学院の法学既修者コース(2年)に入学
  • 法科大学院修了見込みで司法試験を受けることができる
  • 地方大の法学部と都市部の法科大学で連携の動き
  • 法科大学院は、ピークの74校が、35校に
  • 予備試験(法科大学院を経ない)が最短コースとして人気
  • 法曹コースを順調に進めば、法曹資格を得るための期間は、大学4年で予備試験に合格した場合と同じ

という内容です。

 

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日経の図をみたら良く分かるのですが、大学を3年で卒業できる繰り上げ卒業と、法科大学院の2年生で司法試験を受けられるという点で、2年間早くなっています。

どの大学のどの文科系学部でも同じですが、まじめに大学に通っている人は、3年生で科目は終了していて、ゼミだけだったりします。(普通の大学生は、3年夏から4年夏は、終活をしています。)

 

非常に優秀で、予備試験に合格して、司法試験にバスする人もいるのでしょうが、普通は、この新設のコースになるのかなぁという気はします。

 

ただ、記事で、大学教授が言っているのですが、法学未修コースがかすむだろうなという気はします。法律論には詳しくても、技術にも詳しい弁護士を生むという本来の司法試験改革の意図は減ることになります。

 

技術系の弁理士などが受けていた、夜間の法科大学院もほとんどないように聞きます。

 

ただ、筑波大学法科大学院は夜間もあるようです。

法曹専攻<法科大学院> | 受験をお考えの方へ | 筑波大学 東京キャンパス社会人大学院

 

30代なら、ここは魅力的ですね。

 

もし、夜間大学院に行くなら、引越しをして、茗荷谷筑波大学の東京キャンパス)の近くにワンルームマンションでも借りて勉強しないと、仕事と勉強と健康の両立ができそうにありません。

 

私個人は、50代ですので、もういいかという感じです。

 

最近、マスコミも、知財問題でも、弁理士ではなく、弁護士に質問をすることが多くなり、弁理士がかすんでいます。一人一人の弁理士は力があるし、弁理士会も力があるのに、全体として地位が低下しているのが、理科系出身の弁護士が減ることで何とか維持されるかもしれませんが、微妙な話です。

 

外国特許や、外国商標の、NGBやマークアイやGMOブライツコンサルティングを見ていてわかるように、本当は、資格なんてなくても、力さえあれば、企業からの依頼は来ます。

 

先日、あった、依然の会社の後輩が、海外の複数国で法律事務所のパートナーのようなことをしているのですが、法曹資格も弁理士資格もないようでした。

中国の商標出願の代理人も、特に資格が不要で、有限公司です。

日本も、それで良いのかもしれないという気がしますが、そんなことを言うと、弁理士会から怒られそうです。

 

10数年前の司法試験改革は、弁理士法改正にも大きな影響がありました。

あのとき、弁理士会内部で、商標出願を行政書士にという話があったように記憶しています。弁理士の訴訟代理権を取るためには、商標を切り捨て、行政書士会とタイアップして、訴訟代理権に応援してもらうという話だったと理解しています。

 

行政書士会とタイアップしても、知財の訴訟代理権を取れたかは不明です。

当時は乱暴な意見だなと思いましたし、商標出願を守るべきと思いました。

しかし、あれから10数年経ちましたが、次に同じような問題が出てきたときに、商標弁理士として、どのような答えを容易できているかは疑問だなあという気がします。

日本電産の社名変更

NIDEC(ニデック)へ

2019年6月18日の産経WESTで、日本電産の永守会長が、記者会見で将来的には社名をブランド名の「Nidec(ニデック)」に社名変更するという明らかにしたとあります。

日本電産、「ニデック」に社名変更検討 - 産経ニュース

  • ブランド名を打ち出し、海外での商品展開を加速
  • 株主総会での質問に「いずれ変えないといけない時期が来ると思う」
  • 現在、英文商号は「ニデックコーポレーション」を使用。世界的に「ニデック」のブランド名で製品を販売
  • ニデックは海外で浸透している
  • オムロンも変えた。ブランド名と社名は一緒の方がいい」
  • 変更の時期は明言しなかった
  • 何らかの最終製品を手掛けるようになる時期か、電気自動車(EV)などで中核となる部品を製造するようになった時期に判断する考え
  • 「おそらく連結売上高が3兆~4兆円になるころだろう」
  • 日本電産の連結売上高は、令和5年度に4兆円になる見通し

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日本電産株式会社のブランド名が、Nidecというのは、知っていましたが、英文商号が、すでにNIDEC CORPORATIONとなっているのは、知りませんでした。

 

ブランド名と英文商号がNIDECなら、日本語の商号もNIDECになるのが、素直です。

 

日本電産のWebサイトには、色んなブランドの話が載っていました。

会社概要や日本電産全般に関するご質問 | 日本電産株式会社 - Nidec Corporation

  • 日本電産の社名の由来:日本を代表するグルーバル企業になる→日本を含めた。当時の日本電気㈱や松下電器産業㈱を超える会社になりたいという決意→日本電産
  • Nidecのブランド名の由来:日本の「Ni」と電産の「de」から「Nidec」に
  • Nidecの読み方:「ニデック」(英語圏ではナイデックと発音されている)
  • コーポレートカラーが緑の理由:創業者の永守さんは、九星術では「土」の性質を持つ二黒土星。土には緑が欠かせず緑があれば豊かな土壌になるとの理解から、将来の成長力をイメージさせる緑を基調とした
  • 「All for dreams」のコーポレート・スローガンの意味合い:全グループ社員が一丸となって「夢を形にする社員集団」となり、常に「挑戦と成長と強さ」を追求するため

非常に素直にまとめらているなぁと思いました。

 

特に、コーポレートカラーが、緑という点は、スターバックスなど、最近の流行でもあり、環境に絡めて説明することも可能(海外では環境のカラーは青だったりします)ですが、非常にストレートに、占いのようなものから来ているとあります。

ブランドコンサルなどに相談すると、こんな回答は出てきません。自分達でブランドを創っているという感じがして非常に良いと思いました。

 

松下電器産業株式会社は、松下電産と略称されており、電工と区別するときは、単に電産とか言っていましたので、それに日本を付けると、確かに松下電産を超える会社(日本電産)になりますね。

意気込みが良いなと思います。

 

今回の社名変更も、株主総会での質問、それを受けた記者会見での質問のようですが、自然体で肩に力が入っておらず、良いと思いました。

 

今、1兆5000億円の連結売上を、令和5年に4兆円という計画のようです。売り上げが、3兆円~4兆円になる頃に社名変更するというのですが、期間は3年~4年程度となり、短いものです。一つの中期程度で、売上を2~2.5倍にする必要があり、相当なストレッチが必要です。

 

東芝のチャレンジ、ストレッチとは、桁がちがうような気がします。

 

こうなると、M&Aですが、同社のWebサイトには、過去買収した63社の一覧も掲載されています。質問が多そうな点ではありますが、こんなように、M&Aのまとめをしている会社は、見たことがありません。

最近は、海外企業の買収が多いようです。

 

モーターの入った、消費者向けの製品となると、掃除機、扇風機となり、家電をやるとすると、ダイソンのような製品でしょうか。

 

 

スタートアップが選ぶ大企業

KDDIが首位

2019年6月20日の日経に、イノベーティブ大企業ランキングが載っていました。イノベーションリーダーズサミット実行委員会と経産省が共同実施したとあります。

 

ランキングは、

1位:KDDI

2位:ソフトバンクグループ

3位:トヨタ自動車

4位:NTTドコモ

5位:富士通

6位:パナソニック

7位:JR東日本

8位:東急電鉄

9位:ソニー

10位:デンソー

となっています。

 

アンケートは、2019年5月に実施。スタートアップ企業約千社に、スタートアップとのオープンイノベーションに積極的な大企業5社を答えてもらう方式で、483社の回答があった。

KDDIは、前回に続き1位で、同社はこれまで60件を超えるスタートアップと事業連携を実現している。

 

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オープンイノベーションの重要性が云われて久しいですが、このイベントは、活発なようです。オープンイノベーション先の見本市のようなものです。今年は、10月28日-30日で虎ノ門ヒルズであるようです。

Innovation Leaders Summit 2019

 

協業の例が、次のページにあります。

Innovation Leaders Summit(イノベーションリーダーズサミット)

どのスターアップも、ロゴなどは綺麗です。

 

イノベーションリーダーズサミットは、経済団体などで活躍する大企業の経営者のうち、オープンイノベーションなどに積極的な方が中心となって、立ち上げたもののようです。

Innovation Leaders Summit(イノベーションリーダーズサミット)

発起人には、著名経営者の名前が沢山あります。

 

サミットが、どのようなものかというと、

  • VCなどの約100人のILSアドバイザリーボードが推薦するベンチャー約500社
  • 大手企業約100社
  • 3日間で2272件の商談
  • 866件の協業案件
  • M&Aや資本業務提携、共同研究なども活発に行われるなど大手、ベンチャー双方にとって飛躍的な成長機会

とあります。

 

確かに、500社で866件の商談成立というのは、高いマッチング率です。

そもそも、VCに選ばれた500社ですので、その時点で、何か光るものがある企業ばかりなのだと思います。

 

イノベーションリーダーズサミット実行委員会は、大手企業の経営者側の人が中心です。

 

とすれば、冒頭のランキングですが、経営者がベンチャーとのマッチングの会をやっているのですが、協業に積極的な大企業はどこかをベンチャーに聞いていることなります。

大企業(の経営者)が主催者で、スタートアップがお客さんのようなものですが、参加者である大企業の評価をベンチャーがしている点、ひっくり返している点が面白い点です。

 

こんなランキングが出されると、大企業としても、来年はもっと積極的にスタートアップとの協業に取り組もうとなるのではないかと思いました。

マッチングをより進めるには、大企業の理解や制度をどんどん変えていく必要がありますが、制度の活性化策(大企業の自己評価)を、プログラムとして内在させているといえます。

 

そもそも、スタートアップとは、何を指すのかは、良く分かっていません。単なる中小企業ではないようです。

スタートアップとは、

新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体

ということのようです。それ以外はスモールビジネスということだそうです。

ベンチャー企業とスタートアップの違い

 

そうなると、エクジットを見つけるものとして、このイノベーションリーダーズサミットは意味があるということでしょうか。

 

HuaweiがVerizonに10億ドルを請求

200以上の特許使用料

2019年6月14日の朝日新聞に、ファーウェイがベライゾンに、200以上の特許について、10億ドル(1080億円)の使用料を請求しているという記事がありました。

ウォールストリート・ジャーナルなどが報じているようです。

 

  • ファーウェイは、通信機器からIoTまで、広範な特許使用料をベライゾンに要求
  • ベライゾンは、この問題はベライゾン1社の範囲を超えるもので、地政学的ながれの中で、産業全体に影響があり、国内外の関心を呼び起こすとコメント
  • ファーウェイは、コメントなし

とあります。

 

コメント

大きな金額の請求です。

しかし、ファーウェイがアメリカで製品を販売していれば、アメリカ企業からのカウンターも恐いですが、製品を販売できてない状況下であれば、アメリカ企業からのカウンターも恐くないので、今後も、どんどん特許訴訟になりそうな気がします。

 

何より、現在まだ4Gの段階で、10億ドルです。

今後の5Gで、ファーウェイの特許のポートフォリオが更に強化されているとすれば、これからの方が、ファーウェイの特許は脅威になると思った方が良いのではないでしょうか?

例えば、China IP magazineを見ていると、ファーウェイの5Gの必須標準特許の数は、28.9%で世界1位です。

http://www.chinaipmagazine.com/en/journal-show.asp?id=1557

分野によっては、ファーウェイの特許の比率は、77.26%とあります。

 

これは、5Gの時代は、ファーウェイ抜きには考えらない時代であることを示しているように思います。

おそらく、5Gの時代は、10億ドルどころではない請求がファーウェイからなされるのではないでしょうか。

 

関連で、米上院議員のルビオ氏が、ファーウェイのような制裁対象企業は米国で特許の侵害訴訟提起を含む救済を求めることができないという法案を提出していることも話題になっています。

Senator Rubio targets Huawei over patents - Reuters

 

元々、ファーウェイの問題は、バックドア問題で、ファーウェイ製のルーターなどの通信機器が、中国による米国のスパイを招くという安全保障問題がだったのですが、しだいに経済問題になり、最後は特許問題に波及してしまったという感じです。

 

第二次大戦前後、昔のドイツのイーゲーとスタンダード石油の間の、石炭から石油を作る特許や、合成ゴムの特許は、政治の対立とは別に、ドイツ企業と米国企業が裏で手を結んでいたりしたようです。イージーには、第二次大戦中も米国企業から特許使用料が支払われていたそうです。(井上岳史「特許が世界を塗り替える」NTT出版

 

5Gなどは、ちゃんとした団体があり、オープンなので、そんなことはないと思いますが、今回の問題も、5Gの標準特許の団体から、ファーウェイの離脱があると、一体どうなるのかなという気もします。

これも想定しておかないといけないかもしれません。

そうなった場合、5Gがストップすることはなくても、より高額の特許使用料争いになる可能性があります。

 

WTOの恩恵を中国が受けたのは間違いないのですが、WTOが立ち往生して、TPPになり、そこまでは良かったのですが、トランプ大統領になり、America first政策がTPPを蹴散らしてしまいました。

米中の貿易戦争は、しばらく続くのでしょうが、特許はどうなっていくのかという感じがします。

 

ルビオ上院議員の法案は、権利があっても権利行使できないというものですので、これは強烈です。

もし、この法案が、成立するようなことになれば、WTOのパネルでの紛争処理になるのでしょうが、WTOの裁定があっても、アメリカが従うかどうかは分かりません。

 

制裁対象には、東芝機械のココム違反のようなものもあり得るので、リストアップされることが日本企業にも絶対ないとはいえません。

この法案は、成立はしないタイプの法案だとは思いますが、もしも成立しそうなときは、日本企業、経済産業省特許庁弁理士なども反対の声を上げるべき法案ではないでしょうか?

パリ条約の内国民待遇の原則まで否定されているような感じがします。まだ、イージーとスタンダード石油の特許契約の方が、特許への信頼がある分、ルビオ案よりは、ましなような気がします。

アディダスの3本線の商標

EU高等裁判所で無効に

2019年6月20日の日経電子版で、アディダスの3本線の商標について、EU裁判所が、商標を無効としたEUIPOの判断を支持する判決をしたことが載っていました。

アディダス「3本線」の商標権制限 EU裁判所が判断 (写真=ロイター) :日本経済新聞

 

  • アディダスが靴や衣料品に使用している「3本線」
  • アディダスは、3本線の向きなど使い方を限定しない、広範な商標保護を目指した
  • 欧州連合EU)の高裁にあたる一般裁判所(ルクセンブルク)は、アディダスの「どんな向きにも付けられる同じ幅の3本の平行な線」がEU全域において、同社の製品だと見分けられるだけの独自性を証明できていないと結論
  • 2014年にEU知的財産庁(EUIPO)がアディダスの「どんな向きにも付けられる同じ幅の3本の平行な線」を商標登録
  • しかし、16年にベルギーの会社が異議を申し立て。EUIPOは商標権を取消
  • アディダスはこれを不服として訴えていた
  • 上級の欧州司法裁判所(ECJ)で争う可能性はまだ残っている

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久しぶりに、海外ネタです。

 

アディダスは、EUTMで、商品「衣服、靴、帽子」について、3本線を権利化しようとしていたようです。商標は、縦方向に3本の太いラインが並んでいるものです。

商標の説明に、商標は、製品のどちらの方向にも向けられた、等しい幅の3つの平行な等距離ストライプで構成されているとあります。

http://euipo.europa.eu/eSearch/#details/trademarks/012442166

 

アディダスは、すでに、部分意匠的に、商品を破線でかき、3本線を実線で書いた商標登録は、他にもあるようです。

今回の商標は、完全に、「3本線、等間隔、ある程度太い」ものは、「方向性に関係なし」に商標権をとろうというものです。

アディダスは、斜めになった3本線だけではなく、3本線を縦に書いたものや、ジャンパーの肩から腕にかけて3本線をあしらったものなど、商標としてだけではなく、デザイン要素、シンボルの図形として、3本線を活用しています。

 

そもそも、不競法で十分そうなものであり、商標権付与まではできないかなぁという権利です。衣服や帽子で、三本線など、いくらでもあります。太さや等間隔というのはありますが、デザイン的な使用と商標的な使用が交錯するところであり、あまりに広い権利という気がします。

 

ロイターの記事によると、アディダスのただの3本線の無効の請求をしたのは、ベルギーの Shoe Branding Europeであり、2008年に、1892年に設立され、欧州でもっとも古いスポーツブランドのPatrick(シューズメーカー)を買収しているようです。

 

そして、このPatricのブランドは、2本線(方向はアディダスと逆)であり、アディダスの商標に似ているとして、Shoe Brandingの商標が2018年に無効になっていたようです。

大学生のころ、履いていた靴が、白いPatrickでした。こんなところで、出てきたのかと思いました。

 

さて、アディダスは、EUの5カ国の使用は提出していましたが、EUすべてではなかったようです。記事は、アディダスには、まだ、他国についても、証拠を提出することで、3本線をEUTMで権利化する可能性があるような書きぶりです。

 

商品は、たった3商品ですが、本当に、方向もないような商標の登録を認めてよいかは、独占適応性があるのか、議論がありそうです。 

https://www.reuters.com/article/us-eu-court-adidas/adidas-loses-eu-bid-to-extend-three-stripe-trademark-idUSKCN1TK0P7