Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「送料無料」と「送料込み」の違い

言い換えで問題解決?

2020年2月14日のIT Mediaで、楽天三木谷社長が、問題になっている「送料無料」という言葉を、「送料込み」に変更するという話を読みました。

楽天、「送料無料問題」で方針転換? それでも強気「公取は分かっていない」「影響あるのは8%」 (1/2) - ITmedia ビジネスオンライン

  • 送料の施策は3月18日に開始予定
  • 「価格が安い順」検索では、送料別にして商品価格を低く設定すると上位に表示
  • 安いように見えるが、送料を加えると実は高いとユーザーから批判
  • 楽天は、税込3980円以上になる購入については「送料込み」の価格で表示するよう出店者に義務付ける「送料無料ライン」の導入を決定
  • 3980円以上の購入については別途送料がかからないため「送料無料」という表現
  • 「無料」という表現が当初の狙いを外れて「独り歩き」
  • 「送料無料ライン」という表現を「送料込みライン」へ改称
  • 公取委の調査の影響あり
  • 既に送料を無料(=送料込みの商品価格)としている商品は、楽天市場全体の8割
  • 残りの2割から、出店者らの意見を反映して対象外とした商品や地域を除外すると、「送料無料化」の影響は全体の8%

というものです。

 

コメント

加盟店と楽天の争いに、公正取引委員会の調査も入っていましたが、言葉の言い換えで問題が回避できるのかな?というのが、感想です。

 

加盟店の同意を取らずに一方的に加盟店に不利なように規約の改定をすると優越的地位の濫用になるようですが、加盟店の同意があれば問題ないようです。

今回、大型商品や冷凍冷蔵商品を除くとか、離島を除くとか、別の対策も打っているようであり、影響を受けるのが全体の8%に留まるなら、加盟店からのクレームが相当減る可能性があり、その結果として優越的地位の濫用という状態にならなる可能性はあると思います。

 

さて、話題の「送料無料」と「送料込み」は、あくまで言葉の言い換えでしかないのですが、加盟店との話を進めましということをシンボライズするものとして、言葉を差し替えたのかもしれません。

 

スーパーで買い物をするときの、「税抜き」と「税込み」の表示に近いものです。

 

実際は、送料はどこかが負担する必要があります。もともとは、今回の楽天の説明にあるように「送料込み」というのが、本当のところだったのかもしれません。

しかし、「送料込み」では消費者からするとアイキャッチがありません。消費者はAMAZONの送料無料になれているので、楽天としては対抗上は、表現としては「送料無料」にする必要があったのだと思います。

ただ、「送料無料」という言葉は、加盟店からすると自分の利益を削って送料を無料にするというニュアンスが出てしまいます。

 

これからどうなるのは、まだ明確ではありません。しかし、楽天としては、アイキャッチのない「送料込み」の言葉にしたということです。このロジックでは、加盟店も納得せざるを得ないように思います。

公取の調査まで入ったような問題ですが、この言葉の言い換えは、案外大きいなと思いました。言葉の言い換えを、誰が言い出したのか良く分かりませんが、非常に上手い問題克服方法だなと思いました。

 

しかし、売上アップには「送料込み」よりも、「送料無料」です。一旦、「送料込み」でスタートして、将来は売り上げアップのために「送料無料」にするという方向になるのではないかと思いました。「送料込み」も「送料無料」も同じなので、加盟店側から名称変更の要望がでる可能性もあるなと思いました。

 

別の話として、本質は物流の話であるのはそうだと思います。

Amazonもやっている“送料無料” 楽天だけ“総スカン”の理由 (1/2) - ITmedia ビジネスオンライン