Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その59)

商標登録無効審判

登録に瑕疵がある場合、このような本来登録されるべきでなかった商標を、排他的独占的な商標権として有効に存続されることは、表示自由使用の利益に反し、公益に合致しない。このような登録商標は、原則として登録無効にすべである。

 

説明内容としては

  • 無効審判事由と登録拒絶事由の差異
  • 後発的無効事由の審理の運用指針(後発的無効事由に該当するに至った日を明らかにする必要がある)
  • 商標登録が普通名称化、慣用商標化した場合(他の適切な無効理由がない限り、登録は存続する。26条1項2項しか方策がない。)
  • 除斥期間
  • けりあい現象
  • 無効の遡及効(後発的無効事由については、その原因が生じたときから。商標法46条の2)

というようなところです。

 

コメント

後発的な無効理由に、普通名称化がないのは論点です。無効審判では、いつから普通名称化しているのかなどという難しい問題が生じます。特に、普通名称化などは、いつから普通名称化したなどと明確に言えるものではありません。

新しい取消審判を創設して、取消後に消滅するとすべきだと思いますが、そうなると新しい制度を作る必要がでてきます。ここはひとつの論点だろうと思います。

Wikipediaによると、普通名称化の取消は、次の国にあるそうです。

米国14条、EU50条、英国46条、ドイツ49条、フランス714条の6

商標の普通名称化 - Wikipedia

 

無効と異議を二本立てで持つ意味ですが、EUTMでは無効請求では相対的拒絶理由も絶対的拒絶理由も双方とも主張できますが、異議申立では原則として相対的拒絶理由の主張しかきません(絶対的拒絶理由の主張ができない)。

 

EUTMは審査主義であるといっても、指定商品の問題と、絶対的拒絶理由しか判断しません。審査官の審査と異議申立をセットで、全体的に審査と見ることが可能です。異議申立は先行権利者による(公衆によるではなく)、審査という考え方です。

 

審査というと民間ではなく役所がする行為のように思いますが、欧州では先行権利者がトリガーを握ります。先行権利者の義務のようでもありますが、自分の権利を守り広げるための権利と見るべきなのだろうと思います(異議申立権のようなものをイメージします)。

 

ここまでさっぱりと異議申立は先行権利者による相対的拒絶理由の判断(よって、異議では相対的拒絶理由しか列挙していない)、無効は行政庁による登録の瑕疵の判断(よって、絶対的拒絶理由も相対的拒絶理由もある)、と割り切ってしまうと、異議申立制度がガゼン生き生きとしてきます。

 

現行の日本の実態を見ていると、異議は無くしてもよいかもしれない程度のものになっています。付与前異議に戻して、異議を活性化するか、異議申立を無くして無効審判に一本化するかですね。

 

しかし、スイスなど、無審査主義国で、異議申立がないのは理解できますが、審査主義国で異議申立がないとするのは、海外の人に驚かれるでしょうね。そう考えると、付与前異議に戻して、活性化を図るのが、一番筋が良いように思います。

 

付与後異議は、相対的拒絶理由を審査しない欧州タイプと整合性がよく、あまり審査主義国向きではありませんでした。