Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

特許庁 すべてデジタル申請

500種類をデジタル化

2020年10月3日の日経に、特許庁の申請手続きをすべてデジタル化するという記事がありました。

特許庁の行政手続き、全てデジタル申請可能に :日本経済新聞

 

  • 梶山弘志経済産業相は2日の記者会見で経済産業省で押印の必要な2000の行政手続の押印を廃止する方向で検討と説明
  • 特許庁が、800種類ある特許や商標に関する手続きを全てオンラインで申請可能にすると発表
  • 特許申請など300種類はデジタル化済み
  • 残りの500種類が対象。厳格な本人確認が必要なため電子化が遅れていた。電子証明などデジタル技術を活用
  • 電子申請の方法と移行時期は年内に詰める
  • 特許庁は、年間約310万件の申請のうち約9割にあたる約275万件はすでにオンライン化

 

コメント

朝日新聞の見出しは、「特許庁申請手続き ハンコ全廃へ」という見出しです。日経のデジタル化という説明と、少し違います。

朝日新聞には、今回の電子申請の対象が、「特許移転の申請書」や「委任状提出書」とあります。おそらく譲渡証書や、委任状は押印かサインが必要であり、それを特許庁に提出申請書が電子化されるのだろうと思います。

そもそも、特許出願や商標出願に比べると非常にレアな手続きであり、譲渡証書や委任状に押印やサインがあることを前提にすると、これって本当に効果があるのかなと思ったりします。

 

特許庁の審議会の資料で、何か関係ありそうなものがないかと思って調べると、次の資料がありました。

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kihonmondai_shoi/document/01-shiryou/01-shiryo01.pdf

 

産業構造審議会 知的財産分科会 基本問題小委員会の資料で、10月9日付けのものですので、「できたて」の資料です。

この63頁に大臣の発表までの経緯がありますが、オンライン申請、システム化、申請手続きデジタル化という言葉で並んでいます。

 

65頁に、申請手続等デジタル化推進計画の説明があります。

まず、総申請数は、310万件だそうです。

そのうち、電子申請可能なものと不可能なものがあり、電子申請不可能なものは20万件あります。これは、マドプロの申請や異議申立などがあります。

次に電子申請可能なものが、290万件分あるのですが、275万件は電子申請されているのですが、15万件は電子申請が可能ですが、紙申請されているようです。

 

全件、オンライン申請可能とすると、現在不可能は、20万件の多くはオンラインにシフトしますが、今もオンライン申請可能なのに、紙申請されている15万件は、このまま残るはずです。

 

これをすべて無くすには、オンライン申請のみを受け付け、紙申請は受け付けないとしないといけないのですが、果たしてそれができるかです。

 

56頁を見ると、特許出願のオンライン申請比率は99%もありますが、商標出願のオンライン申請比率は今年は高いようですが、それでも83%です。17%も、紙出願があることになります。

確かに、途中受任案件、その他で、最近も紙出願したものを複数見ました。商標出願が19万件あるとして、その17%とすると、32,300件です。これを全てオンラインにするのは、少し無理があります。

クラウド電子署名は押印よりも楽とは言えません。却って大変そうです。

 

紙出願を利用しているのは、個人や中小企業などが多いと思います。シンガポールのシステムのようにアプリで簡単に出願できるなら良いのですが、今の電子出願は難しすぎるのではないでしょうか。

 

シンガポールまでやると、流行りのWebやアプリで出願代行をする特許事務所は、大打撃を受けると思います。彼らがやろうとすることを、特許庁がやることになるからです。個人や中小企業が、直接、アプリで特許庁に提出するイメージですので、アプリで簡単に出願できることはその事務所の売りにはなりません。

 

しかし、シンガポールまで日本は行けないでしょうかれか、現在、電子申請できないものを電子申請することができるようにするが、紙しか出せない人には紙を残すとなるのが素直です。でもこれでは押印が残るように思います。

 

そうなると、複雑な電子申請を代行してもらうために、従来、紙で商標出願していたの個人や中小企業は、アプリで出願するような特許事務所にでもいくしかないのでしょうか。

 

シンガポールのように、特許出願ソフトの抜本的大改訂することが筋が良いのですが。