輸入原酒の瓶詰めも日本産
2020年11月24日の朝日新聞の夕刊の一面に、日本産ウイスキーの基準がなく、輸入原酒を瓶詰したものも日本産となっており、海外から批判があるという記事がありました。
- Japanese Whisky、Japanese Blended Whiskyともに、輸入原酒を使っていても、最終的に日本で仕上げれば、日本産といえる
- 海外ではスコッチ、バーボンなど厳しい規制があり、日本産(Japanese)についての規制がないことが、海外から問題視
- 日本酒とワインは地理的表示制度の対象
- 日本酒は、原料に日本産米を使い、国内で醸造することが条件
- ワインも同様、国産ブドウのみを原料に、国内で製造されたものが日本ワイン
- 海外果汁をつかうと、国内製造ワイン+輸入原料を使ったことの明記が必要
- 地理的表示は、WTOの協定の定める知的財産権
- ウイスキー文化研究所は、国内原酒を熟成させたものをジャパニーズウイスキー、外国産原酒をブレンドした場合はジャパンメイドウイスキーとしている
- 業界団体が日本産ウイスキーの基準に向けて検討開始
- 国税庁は、業界の取組を見守っている
とあります。
コメント
ふだん、原産地表示や原産地名称の話にタッチしていないのですが、知財の一種ということで、興味を持っておく必要があるテーマです。
Wikipediaによると、
パリ条約に原産地表示と原産地名称があり、WIPOはこの2つを含めて、地理的表示といっています。
さらに、WTOのTRIPS協定では、地理的表示の定義があります。
狭義の地理的表示や原産地名称は、ある地域の地名が商品の名称として用いられるものであって、その商品の品質や特性がその地域の環境に由来するものを指す。これに対して、広義の地理的表示や原産地表示は、ある地域の地名が商品の名称として用いられるもの全般を指す。
欧州各国は全般に地理的表示の保護に積極的であるが、アメリカ合衆国などのアメリカ大陸諸国は地理的表示の保護に対してあまり積極的ではない。これは、バドワイザー対ブドヴァルの裁判に代表されるように、アメリカ大陸では欧州の地名に由来する商品が多く製造・販売されているためである。
日本のぶどう酒と蒸留酒の保護
TRIPS協定の成立を受けて酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律が改正され、同法第86条の6第1項に基づく酒類の表示基準の一つとしてで「地理的表示に関する表示基準」を定めてぶどう酒及び蒸留酒の保護を図ってきた
TRIPS協定を超えて日本酒を保護
2005年(平成17年)10月1日には、保護対象がTRIPS協定の範囲を超えて、日本酒にも拡大された。
現在、地理的表示であるとしても保護されているものの一覧が出ているですが、蒸留酒は焼酎ばかりであり、ウイスキーがありません。
また、地方の地域の名称が中心で、「日本酒」のように、「ジャパニーズ」ウイスキー、「ジャパニーズ」ワインというものもありません。
朝日新聞の記事では、国産ブドウのみを原料に、国内で製造されたものが日本ワインとありますが、地理的表示(GI)ではなく、国税庁の基準で決まりがあるようです。
果実酒等の製法品質表示基準を定める件|国税庁 (nta.go.jp)
農林水産省と国税庁に分かれているので、理解するのが難しいところです。