令和の時代のコンセント制度
日本弁理士会中央知的財産研究所から、研究報告第50号の冊子が送られてきました。タイトルは「日本商標法の未来のための方策検討」とあります。
少し長い論文が多いので、パテントの論考を読むよりは時間がかかりますが、気になったものを見ていきたいと思います。
まずは、一番最後にあった「令和じの時代のコンセント制度」、佐藤俊司弁理士のものです。
この論文は、コンセント制度導入の議論を、各種の報告書、判例、答申書を順を追って解説しているものです。
面白いなと思ったポイントは、
コンセント制度は、
- 国際的調和の観点などから、従来から要望があるものの、同意書交渉に伴う審査の長期化の懸念から1996年に見送られた
- 判例ではコンセントを参酌するものとしないものがある(CUBSのロゴとUBSのロゴは参酌されたが、LEBRONとREVLONは参酌されず)
- 取引事情説明書は活用されていない
- 2014年の弁理士会の報告書が「法改正」や「類似概念と混同概念の整理」について慎重に検討することを要望
- コンセント制度を導入していない国は、日本、韓国、タイ、インドネシア程度
- アサインバックの権利は使用意思の点で無効ではないかという議論があるが、無効審判を請求できるのは、利害関係人のみ。アサインバック時には、不争義務や混同防止義務を記載する
というような点でしょうか。
個人的には、導入すべきと思っていますが、上の面白いなと思った点については、
1.の審査の長期化ですが、中国などでは別に審査を待ってくれるわけではなく、ダメなら、再出願に切り替えるだけなので、これは拒否の理由にならないなと思いました。
2.少し古い判例だなと思いました。最近は、同意書を証拠の一つとして提出する運用はないということでしょうか?
3.取引の事情説明書は、確かに使えないなと思います。
4.の「法改正」や「類似概念と混同概念の整理」ですが、これを言い出すと、だんだん話が大きくなり、導入できるものが導入できなくなります。弁理士会のこの年の答申書は、明らかにコンセント制度導入の足を引っ張ったように思います。
5.のコンセント制度未導入国がこの4各国というのはショックです。中南米の国は、登録主義や審査主義がきついのですが、メキシコやペルーでもコンセントが認められているようです。
6.アサインバックの契約書には不争義務をいれないと危険だが、それを理解せずにアサインバックをしている人が相当数いそうだなと思いました。
仮に、韓国が導入するなら、日本の遅れは決定的ですね。