Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

研修

新・商標法概説(その30)

品質誤認的商標(16号)、ぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する商標(17号)、立体の機能的形状(18号) まず、品質誤認ですが、商品の「品質」又は役務の「質」とは、商品又は役務の特性という程度の広い意味です。 品質、質の良否についての誤認と、他…

新・商標法概説(その29)

混同的商標(15号)-相対的不登録事由 15号は、10号~14号までの総括的規定で、私益保護の規定とされる。不正の目的を除き、除斥期間の適用もある(47条)。 旧法は、これを公益的性格のもとしており、私益的規定と重複適用できるとしていた。そのため、「1…

新・商標法概説(その28)

防護標章(12号)、商標権消滅後の登録禁止(13号)、種苗法の登録名称(14号) 防護標章(12号):本号の規定に該当する商標は、登録防護標章と同一のもの(相似形を含む。)に限られる。 商標権消滅後の登録禁止(13号)の廃止(削除):廃止により、登録…

新・商標法概説(その27)

先願(11号)ー相対的不登録理由 先願主義(8条)、商標登録主義の原則から、先願違反のものは登録されない。商品又は役務の出所混同を防止するためでもある。 旧法は、「最先の商標登録出願人」とせずに、「他人の商標登録出願人」としていたので、後願が先…

新・商標法概説(その26)

周知商標(10号) 周知商標: 需要者の間に広く認識されている商標 規定の趣旨: 周知商標という既存商標の使用状態の私益保護説と、出所混同防止のための公益的な規定という説があり、現在は私益保護説が有力。 しかし、立法理由はむしろ公益説を中心とする…

新・商標法概説(その25)

肖像・氏名等(8号)と博覧会の賞(9号) 肖像・氏名等は、相対的不登録理由であり、一方、博覧会の賞は、絶対的不登録理由です。 肖像・氏名等 趣旨:他人の人格権を保護するため(混同防止ではない) 肖像、氏名には、著名なものという制限はない。 (理由…

新・商標法概説(その24)

4条1項7号(と19号) 7号(公序良俗違反商標)は、次の例があります。 「征露丸」 「特許理工学博士」など、多くの博士号入り文字商標 「特許管理士」 「出版大学」 本号については、今、世界的に問題になっている「悪意の商標」が関係します。 「悪意の出願…

新・商標法概説(その23)

4条1項1号から6号 絶対的不登録理由の1号から6号の箇所を、順番に読んでみます。 国旗等(1号) 同盟国紋章等(2号) 国連標章等(3号) 赤十字標章等(4号) 監督証明用印章(5号) 公共機関標章(6号) 1号~6号までは、似た規定です。 すこし注目したのは…

新・商標法概説(その22)

消極的要件 絶対的不登録要件と相対的不登録要件 本書では、3条を積極的要件として、4条を消極的要件としています。そして、4条の消極的要件を更に、 絶対的不登録理由:4条1項1号~7号、9号、16号 相対的不登録理由:4条1項8号、10号~15号、17号~19号 に…

新・商標法概説(その21)

使用による識別性 使用による識別性(特別顕著性)については、3条1項3号から5号までに該当する商標であっても、「使用をさせた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる」に至った商標は、商標登録を受けることができる…

新・商標法概説(その20)

識別力のない商標(6号) 小野先生の新・商標法概説を、続けて読んでいます。 3条1項6号は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」は、商標登録を受けることができないとあります。 厳格な文理解釈上は、「識別…

新・商標法概説(その19)

氏・名称 「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は商標は商標登録を受けることができない(4号)。 識別性がないため、個人に独占権を与えるべきではない 氏名は、多くは識別性がある 名称とは、法人の表示をいう …

新・商標法概説(その18)

記述的商標 慣用商標は飛ばして、記述的商標(3条1項3号)ですが、ワイキキ事件を引いています。 「(ー3条1項3号の条文の内容を記載ーは、)業者が自由に使用してよいものであるべきあるから、識別力を欠くことが多いのみならず、それとともに、業者として…

新・商標法概説(その17)

普通名称 3条1項1号の「普通名称」の定義は、取引界において、「その商品又は役務の一般名称であると認められているもの」とあります。 普通名称の認定は、当該名称と商品又は役務の関係、商品製造業者と販売業者又は役務提供者との関係、使用期間、その時代…

新・商標法概説(その16)

識別性(各号の前まで) 標章が需要者に、何人かの業務にかかる商品又は役務であることを認識させる力のことを、「識別力」という。 現行法は、旧法の「特別顕著」という用語を避け、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であること」がわかるものとい…

新・商標法概説(その15)

商標の登録要件 積極的要件(3条) 商標の登録要件は、3条の積極的要件と4条の消極的要件とに区分けして説明されています。 そして、3条は、 自己の業務に使用する商品又は役務について使用をする商標であること 識別性 の2つに分けています。 1.は更に、(…

新・商標法概説(その14)

登録主義と使用主義 1.意義 商標権の成立に着目すべき(小野先生の立場) 登録主義:商標権の成立を登録の事実にかからせている場合、すなわち、登録に商標権の設権的効果を与えている場合(ドイツ、日本) 使用主義:商標権の成立を使用の事実に基づいて…

新・商標法概説(その13)

商標権の権利行使と不正競争防止法 商標権の権利行使について、旧不正競争防止法6条は、商標法による「権利の行使と認めらる行為」には同法は適用されず、従って、旧不正競争防止法1条1項1号・2号の混同行為(及び4条1項ないし3項の行為)に該当する行為も不…

新・商標法概説(その12)

商標法の概念、商標法の体系的地位、不正競争防止法と商標法 小野先生は、使用権と禁止権という言葉に整理されています。 江口俊夫先生と同じであり、専用権と禁止権という網野先生とは違うようです。 商号の商標化(株式会社東芝の東芝商標)と、商標の商号…

新・商標法概説(その11)

商標法の国際的動向 この部分では、商標に関連する条約を説明しています。 1.商標の国際性:商品は国を超えて流通するので、商標はそもそも国際的 2.パリ条約:1883年締結。加盟国は170ヵ国。全会一致の原則のため、遅れがち ●商標登録条約(Trademark R…

新・商標法概説(その10)

商標法の沿革 商標の保護は、万葉集や室町時代にあるそうですが、商標制度が整備されたのは明治以降ということです。 明治17年(1884年)商標条例:我が国最初の工業所有権法規。登録主義、先(出)願主義、先使用権、一商標一出願、公示主義、存続期間、更新…

新・商標法概説(その8)

商標の機能 基本的な機能を、識別機能としながら、そこから生じた機能として、出所表示機能、品質保証機能、広告機能があるとします。 強い商標(造語)、弱い商標(品質・性能表示語)とありますが、弱い商標でも永年使用すると強い商標になることもあると…

新・商標法概説(その7)

商標に隣接する標識 ここでは、商標と用語が混同されやすいものについて、比較をして説明しています。 商標と意匠 商標と著作物 商標とスローガン 商標と商品の形態 商標と氏名 商標と商号 商標とサービス・マーク 重要だろうと思ったのは、商標と商品の形態…

新・商標法概説(その6)

商標の種類(分類) 商標の種類は、1構成、2機能、3使用主体、4その他から分類できるとしています。 1 構成上の分類:商標法の商標の定義(構成要素)に沿った分類です。 文字商標 図形商標: 歴史的には最も基本 記号商標: 三井、島津のマーク、ルイ…

新・商標法概説(その5)

立体商標 標章は、標識の一つであり、標識には、視覚を通じて捉えらるものの他、聴覚、嗅覚・味覚・触覚で捉えらるものも標識としての機能を果たすことができる。しかし、動的商標や音響商標はまだ商標法上の商標とは捉えられいない(※当時)。 米国からスタ…

新・商標法概説(その4)

商標概念と商標の使用 この部分は、役務商標や、色彩、立体商標という話もありますが、一番、力を入れて書かれているのは、商標は商品又は役務との関係についての概念であるということと、自他商品識別力との関係です。 まず、商標は標章を独占するものでは…

新・商標法概説(その3)

商標の概念(その2)・・・商品又は役務についての使用 「標章」の概念に続いて、「商品又は役務についての使用」です。 ここは、 「商品又は役務」についての使用 商品又は役務についての「使用」 商品又は役務「についての」使用 と分けて説明しています…

新・商標法概説(その2)

商標の概念 少しずつしか読めないのですが、読んで面白いと思ったところをピックアップしていきたいと思います。個人の感想ですので、重要な箇所は飛ばすこともあります。 「商標の概念」の導入のところですが、 昔は「商標は商品の顔」、役務が入り今は「商…

新・商標法概説(その1)

商標保護の重要性、標識の機能 新・商標法概説を読んで、面白いと思った内容、気になった内容をメモしておこうと思います。まず、3ページから7ページまでを読みました。 実質的な商標法は、商標登録性の有無とは関係ないが、近代商標法は「登録」という法技…

3条2項の機能論

識別性(distictiveness)と識別する(distinguish) 2020年5月号の大塚教授の論文の続きです。 商標が特徴があって識別力を有すると登録されるが、特別の特徴がなく識別力がないときは登録されない(3条1項)。しかし、識別力がない商標であっても使用され、…